山中で途方に暮れた時に導いてくれたモノ
これは、私が小学3年生の頃の不思議な体験話。
当時の私は祖父母に預けられおり、育ててもらっていた。
ある日、祖父母に連れられて、ある山の神社へ行った。
そこは家から20分ほどバスに乗り、乗り換えて30分、さらに山道を20分ほど歩いて登ってやっと着く場所。
そんな場所で、つまらないことで祖父とケンカをした私は、腹立ち紛れに勝手に帰りだした。
「どうせすぐに心配して追い駆けて来てくれるだろう」という思惑も外れて、後に退けぬまま山をずんずんと下りて行った。
下り道を歩いているうちは、「とりあえず下りているから合っているだろう」と思い良かったのだが、下りきってしまった後は、どちらに行けば良いのか途方に暮れてしまった。
泣き出したい気持ちで来た道を振り返ってみても誰もおらず、車も通らず、さわさわと木々が鳴るばかり。
その時、一匹の大きく白い猫か犬のような生き物が目に入った。
どうしようもなかった私は、何となくその後を付いて行った。
歩いても走っても、何故だかその生き物との距離は縮まらず、でも見失わない絶妙な距離で先を歩いてくれている。
そしてふと気づくと、そこは普段からバスに乗ってよく来ている大きな病院の近くの繁華街だった。(子供の頃の私は病弱で月に一度ほどこの病院に通っていた)
「あ、知っている所だ!」
ただ、ほっとした瞬間から、その生き物を見失ってしまった。
仕方なく、いつも病院の帰りに寄るデパートに何となく行ってみたところ、たまたま小学校の同じ部活の6年生グループに出会い、バス代を出してくれた上に、家の方向のバスにも乗せてくれて、私は無事に家に戻って来れた。
着いたのは、もう夜になろうかという時間。
祖父母はすでに親戚や警察にまで私を捜すのを頼んでいたようで、本当に申し訳なかった。
それにしても、私を導いてくれたあの生き物は何だったのだろうか。
今思うと、猫ならペルシャ、犬ならスピッツが雰囲気的に近い感じだった。
でもどちらにしても、大きさがそのサイズではなかったように思う。
記憶が曖昧なせいでそう思うのかもしれないが。
また、周りの人にはその生き物が見えていないような感じがしたのも気になる。
特に繁華街近くは沢山の人が居たにもかかわらず、誰も気に留めていなかった。
それに、学校の規則で子供だけでの繁華街行きは禁止だったはずなのに、先輩たちに偶然出会えたことも不思議でならない。
あとがき
自分では、「お詣りに行った山の神社の神様が、バカな子供を見かねて導いてくれたのかな?」と思っている。
大人になってからそちらへ行った時は、お礼の気持ちを込めて山を拝んでいた。
ただ、もう祖父母も旅立ち、そちらの県へ行くこともなくなってしまったが。
また祖父母いわく、私が勝手に帰ったとは思っていなかったようで。
お詣りする場所は階段を登った先にあったのだが、そこへは祖父と二人で行った。
祖母は少し足が悪く、おみくじを引く所などがある階段の下で休んでいたので、祖父は私がそちらに向かったと思っていたと。
わりと広い神社だったので、祖母の前を気づかれぬまま通過してしまったんだと思う。
(終)