深夜の公園で見た老夫婦
その日、俺はいつものように
自転車で塾から帰ってくる途中、
近所の公園の前を通りかかった。
時計を見ると、
夜の11時だった。
その日は受験目前ということもあり、
塾の教師達に特にしごかれて
クタクタだった。
だら~っと自転車を漕ぎながら、
俺は何気なく公園の方に目を向けた。
その瞬間、
自転車から落ちそうになった。
公園の出入り口に、
ゆっくり何かが近づいて来る。
外灯に照らされて
はっきりと見える。
それは、乳母車に
お婆さんを乗せて、
それを押しながら歩いてくる
お爺さんだった。
あまりにも怖かった俺は、
すっ飛んで家に帰り、
この事を家族に話した。
でも家族は、
ただ単にお年寄りの夫婦が
夜に散歩してただけでしょ、
と言うだけだった。
でも違う。
よく考えれば違うのだ。
あの時、
俺は乳母車に乗った老婆と
お爺さんをはっきり見た。
深夜にも関わらずだ。
それは何故だ?
光があったからだ。
でも違う。
何故なら、あの公園には
外灯なんて無かったのだ。
もちろん道路側にも。
つまり、あの二人を俺が分かるほど
照らすものなんて無かったのだ。
あの老人達は一体、
何だったのだろうか・・・。
(終)