無表情で逆さまの女の子

俺は3ヶ月前、

 

とある大型小売店の

バイトの面接を受けに行った。

 

1週間後、

採用の電話がかかってきた。

 

明日から来て欲しい、

とのことだった。

 

なかなかバイトが見つからなくて

困っていたため、

 

次の日、俺は意気揚々と

バイト先へ向かった。

 

マネージャーに書類を渡し、

 

大まかな仕事の内容を教えられて、

俺は売り場へと向かった。

 

そして3時間後、

仕事を終えて帰ろうとした時、

 

たまたま同じ所で働いている、

友達の母親に声をかけられた。

 

「駐車場、行ったんだよね?

大丈夫だった?」

 

駐車場がどうしたというのだろう。

何かあるのだろうか。

 

「あ、行きましたよ。

駐車場がどうかしたんですか?」

 

すると、友達の母親は

少し声を小さくして俺に話した。

 

「あの駐車場ね、

 

前に飛び降りした人がいるから

気をつけてね・・・」

 

「はぁ・・・気味悪いですね。

気をつけます」

 

気味の悪い話だ。

 

自分のバイト先で

そんなことがあったなんて。

 

しかし、何をどう

気をつければよいのか。

 

まぁ、自殺した人がいたとしても、

俺には関係のない話だ。

 

とりあえず、その日は

特に気にもせず家路に着いた。

 

それから3ヶ月間、

何事もなく俺はバイトをこなしていた。

 

時折、駐車場に行くと、

 

誰もいないはずなのに

視線を感じることはあったが、

 

気のせいだと

自分に言い聞かせていた。

 

そして先月の中旬、

彼氏にフラれたとかで、

 

立体駐車場の屋上から

女の子が飛び降りをした。

 

おいおい!冗談じゃない・・・。

 

俺の仕事場でと思いながらも、

俺はバイトに来ていた。

 

女の子が飛び降りてから

3日間は何もなかった。

 

しかし4日後。

 

店の営業時間が終わり、

 

最後に駐車場を

見回りに行った俺は、

 

見てしまった。

 

1階から3階までを見回り、

 

最後に4階に行った女の子が

飛び降りた、屋上の下だ。

 

気味は悪いが、

 

3日間何もなかった・・・

気にすることはない・・・

 

と普段通りに見回りをした。

 

見回りを終えて帰ろうとした時、

ふと外を見ると、

 

セーラー服を着た女の子が

落ちていく。

 

「・・・!!!」

 

まさか、と思い、

急いで4階から下を見た。

 

しかし、

 

街灯に照らされた道路には、

何もない。

 

気のせいだったのか。

 

そうだ、気のせいだ、

そうに決まってる。

 

無理矢理に自分を納得させた俺は、

逃げるようにその場を去った。

 

次の日はバイトが休みだったため

少し安心していたが、

 

窓の外を見ることが出来なかった。

 

そしてまた次の日、

 

いつものように俺は駐車場の

見回りを終えて帰ろうとした。

 

屋上までの見回りを終え、

4階に下りて来た時。

 

行きたくないのに何故か、

足が外の方に向かってしまう。

 

あぁ、嫌だなぁ、

なんで歩いちまうんだ。

 

そう思いながら、

俺はだんだん柵に近づいていく。

 

そして柵のすぐ内側まで来た時、

俺の目にとんでもないものが映った。

 

逆さまの女の子の無表情な顔。

 

俺は泣きそうになりながら、

走って逃げた。

 

「冗談じゃない!また見ちまった!

気のせいじゃなかったのか!」

 

その日、俺は晩飯も食べずに、

すぐ布団に入った。

 

明日もバイトだと思うと、

気が滅入る。

 

しかし、そんな理由で

バイトを休めるわけもなく、

 

仕方なく次の日もバイトに行った。

 

「外を見なければいいんだ」

 

そう思い、

俺は駐車場の見回りをしていた。

 

しかし4階に来た時、

 

向きたくもない柵の方を、

勝手に顔が向いてしまう。

 

1歩も動けない金縛り状態だ。

 

目を瞑ろうと思っても、

瞼が閉じない。

 

あぁ、嫌だ、見たくない。

 

しかし、視線を動かすことも

出来できない俺は、

 

またアレを見てしまう。

 

無表情な女の子の顔・・・、

いや、無表情ではない。

 

昨日よりも少しだけ

笑っているように見えた。

 

それからというもの、

 

俺はバイトに行く度、

女の子が落ちていくのを見た。

 

少しずつ持ち上がっていく

唇の端。

 

あの女の子が完全に笑った時、

一体どうなるのだろう。

 

そして先週の火曜日。

 

女の子が飛び降りた

曜日と同じだ。

 

落ちていく女の子が、

完全に笑っていた。

 

何があるか分からない俺は、

 

すぐさま後ろを向き、

走って逃げようとしたその時・・・

 

『いっしょに・・・』

 

耳のすぐ傍で声がした。

 

気を失いそうになりながらも、

走った。

 

もう嫌だ、辞めよう。

 

そう思って、

無我夢中で走った。

 

気が付くと、

ロッカールームにいた。

 

俺はすぐさまマネージャーに、

 

疲れて次の日の授業に

集中出来ない、

 

と嘘をつき、

バイトを辞めた。

 

しかし、1週間経っても、

 

あの笑った顔と耳に残った

あの声が忘れられない・・・。

 

(終)

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