UFOと女の子(冬) 4/5

「ええ。病名は忘れましたが、

大分特殊な病気だったそうで」

 

『私のお母さんが宇宙人で。

だから、私も宇宙人なの』

 

ふと、彼女が言った言葉を

思い出した。

 

けれども、それについては

何も分からない。

 

彼女は自分のことに関しては、

ほとんど何も話さなかった。

 

「もしかして、今、

その父親の方は・・・ここに?」

 

「いえいえ。

 

あの事件があった後、

すぐに辞めましたよ。

 

彼の気持ちを考えたら、

とても居られないでしょう」

 

「そうですね。

 

・・・あの、有難うございます。

何だか色々と教えてもらって」

 

「いえいえ」

 

店員にお礼をして、

 

五十円分ずつ別の袋に

分けてもらった菓子を持って、

 

僕は駄菓子屋を出ようとした。

 

けれど、

ふと思い出して振り返る。

 

「あの、最後に。

 

屋上に折り紙の花が

置いてあったんですが。

 

あれって・・・」

 

「ああ、それは多分、

清掃の人が置いたものでしょう。

 

中沢さんじゃないかな。

 

ああ、大層恰幅の良い

おばちゃんなんですけどね。

 

はは。あの人も私と同じくらい

長いですから」

 

「あの花って、確か」

 

「ええ。スミレですね」

 

礼を言って、

僕は店を出た。

 

友人は二人とも百円ショップの前で

退屈そうに商品を見ていた。

 

Kは僕の姿を見つけた途端、

「おっせーよ」と言った。

 

「用は済んだのか?」とS。

 

僕は、まだ、と

首を横に振る。

 

「先に食べといて。

 

一階にフードコーナーが

あるはずだから」

 

K「なになに、

なんなのさっきからお前。

 

変だぞ。

なんかあったんか?

 

それとも何か隠しててて、

いてて痛いSイタイ」

 

たぶん一番状況を理解していないKが、

Sに首根っこを掴まれて引きずられて行く。

 

僕は片手を上げ、

無言でゴメンと二人に謝ってから、

 

また四階からさらに上へのぼる

階段へと向かった。

 

歩きながら思う。

 

僕は本当は全部分かっていたんだ。

自宅であのニュースを見た時に。

 

もう女の子には会えないということを。

 

けれども僕の頭は、

それをどうしても否定したかったようだ。

 

高熱は出たけれど、

もしかしたらそのおかげかもしれない。

 

僕は事故の存在と彼女の名前を

忘れることに成功した。

 

あの子はまだ生きていると、

自分に思い込ませるために。

 

彼女に会いたいがために。

 

僕は目を細めた。

 

屋上へと続く階段に、

 

さっきまでとは違う、

大量の光が降り注いでいた。

 

透明な冬の光ではなく、

色の付いた夏の光だ。

 

所々塗装が剥げていた階段も、

いつの間にか白く綺麗になっていた。

 

十年前に見た光景だった。

何も変わらない。

 

そうして今、

 

僕はあの時と同じように

百円分のお菓子を持っている。

 

戸惑いながらも

一歩ずつ階段を上る。

 

上りながらSが言った言葉を

思い出す。

 

記憶は簡単に曲げられる。

 

だったら、一秒前の記憶は

どうなのだろう?

 

ゼロコンマ一秒前の記憶は?

ゼロコンマゼロ一秒前なら?

 

意識と言うモノが

記憶の集合体ならば、

 

僕が今見ている景色は

そういうモノではないだろうか。

 

そう強引に納得して

歩を進めた。

 

光が段々強くなってくる。

 

どこからか夏の匂いがした。

 

子供たちの声が聞こえた。

 

たまらなくなって、

気が付くと僕は走り出していた。

 

階段を駆け上がる。

 

屋上。

 

そこにはあの銀色をした、

 

アダムスキー型のUFOが

あるはずだった。

 

そして夏の光の中、

確かにそれはあった。

 

僕は急いでその傍へと

駆け寄った。

 

早くしないと僕に掛かっている

魔法が切れてしまいそうで怖かった。

 

けれど目の前まで来ても、

確かにUFOはそこにあった。

 

小さい頃は届かなかった

そのボディを、

 

僕はそっと手で触れてみる。

 

ザラザラとした

プラスチックの手触り。

 

僕は縄ばしごに手をかける。

 

入口の穴は、

頭のすぐ上にあった。

 

この中に居るのだろうか。

 

けれども、

そこでふと立ち止まる。

 

このままUFOの中に

入ってしまって良いのだろうか、

 

という疑問が

降って沸いてきた。

 

いまだ魔法は解けず、

 

僕はしっかりとあの日の

夏の屋上に居る。

 

けれどもだ。

 

僕は本当にこのUFOの中に

入ることが出来るのだろうか。

 

出来る。

 

と答える自分が居た。

 

でも、もし本当にそれが

出来てしまったら。

 

縄ばしごに足をかけて、

僕の身体が地面を離れた瞬間・・・。

 

この幻覚は、幻覚で

無くなってしまうのではないか。

 

『・・・どうしたの?』

 

すぐ頭の上から声がした。

聞き覚えのある懐かしい声。

 

縄ばしごを持ったまま、

 

あまりの唐突さに

僕は息をするのも忘れていた。

 

『入って来ないの?』

 

彼女の声。

 

この声すらも僕の脳が創りだした

幻なのだろうか。

 

それとも。

 

(続く)UFOと女の子(冬) 5/5へ

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