鬼門の方向
知り合いの話なんだが、実話を一つ。
俺の知り合いTが、ある日友達Bの家に
複数人で泊まりに行ったんだそうだ。
Bの家は最近引っ越したらしく、
軽いお披露目会のようなものだった。
しばらくはみんなでボードゲーム等していたのだが、
深夜0時をまわったあたりで、
各々漫画を読んだり好きなことをしていた中、
Bがトイレに立ち上がった。
しかし、何十分経っても戻ってこない。
大の方にしても遅すぎる。
Tは少し不安になり読んでいた漫画から目を離し、
「あいつ遅いな」と周りの友達に言おうとした。
・・・が、その言葉は喉で止まった。
トイレに行ったはずのBが部屋に居るのだ。
「おかしい・・・」
視界の端ではあったが、
確かにBがトイレに行くのを見た。
何より部屋のドアを開けて、
閉める音さえ記憶している。
怖くなったTはBに、
「お前さっきトイレに行かなかった?」と聞いた。
周りの友達も、どうやらドアの音を聞いていたようで、
「俺もBがトイレに行ったと思ってた」と言った。
当のBはずっと部屋に居たと言うのだが、
部屋を出るドアの音はBも聞いたのだと言う。
つまりドアは間違いなく開けられ、
そしてその音を部屋に居る全員が聞いている。
だが部屋に居る人の人数は変わっていない。
あの時一体、誰が出たのだろうか?
結局、その夜は怖くなってしばらくして寝たらしいのだが、
寝ている最中も、電球がチカチカしたり自分達以外の人の
気配を感じたりで、なかなか眠れなかったらしい。
その日はそれで終わったが、
それ以降も日常で、そういう現象が度々起こるようになった。
親や兄弟が居るリビング等でも「自分達以外の誰か」が
部屋から出る音を聞いたりするようになった。
他にも小さい怪奇現象も起きるので、
さすがにBの両親も不安になって、
ツテで霊感のある人に家を見てもらった。
どういう調べ方をしたのかまでは聞いてないが、
Bの家は鬼門の方向に建っていたそうだ。
結局、Bの家族は1年程してまた引っ越したらしい。
(終)