奇妙な現象をもたらす車

6月のある日曜日の早朝、

 

友人のBからの電話で

目を覚ました。

 

電話に出ると、

いきなりBは

 

「これからドライブしねー?」

 

何なんだこいつは、

そう思いながら

 

「何だよ、いきなり」

 

するとBは嬉しそうに、

 

「新車が届いてさ、

慣らしがしてーんだ」

 

俺も新車と聞いて、

 

見てみたい衝動にかられて、

ついついOKを出した。

 

1時間も経たないうちに、

Bは到着した。

 

焦って準備を済ませ、

Bの待つ空き地に着くと、

 

そこには真っ赤な

プレリュードが停まっていた。

 

「すごい形だな」

 

言う気はなかったのだが、

つい口が滑ってしまった。

 

しかし、

 

Bは良い方に受け取ったらしく、

照れていた。

 

俺とBは

立ち話も程々にして、

 

車に乗り込み、

行き先を検討し始めた。

 

Bの希望もあり、

行き先は長野に決定。

 

15分程走り、

中央高速に乗っかった。

 

外見と違い、

乗り心地はすこぶる良い。

 

それから俺は、

 

駄目だろうなとは思いつつ、

Bに聞いた。

 

「もちろん禁煙だよね?」

 

即答で、

 

「吸ったら殺す」

 

俺は笑いながら、

へいへいとうなずいた。

 

高速に乗ること3時間半、

 

やっとの思いで

長野市内に到着し、

 

昼飯を済ませ、

ぶらっと市内観光をした。

 

善光寺を回った頃には

4時を過ぎており、

 

そろそろ帰ろうという事になり、

車に向かった。

 

帰りは一般道を

使う事にしたのだが、

 

この辺は二人とも

土地勘が無いために、

 

地図を見ながら帰る事にした。

 

1時間程走り、

わりと新しめの道路へと出た。

 

すると、

 

新しい道を走り出してすぐに、

奇妙な事が起こり始めた。

 

地図を眺めていると、

小さな声で『おーい』と。

 

俺はてっきりBだと思い、

Bに「なに?」と聞いた。

 

Bは「なにが?」

と逆に聞いてきたので、

 

空耳かと思い「気のせいみたい」

そう答えると、

 

今度は逆にBが「なんだよ」

と聞いてきた。

 

「なんも言ってねーぞ」

 

俺はそう答えると、

Bが首を傾げていた。

 

二人で黙ると、

今度は大きな声で

 

『おーい』

 

俺達二人は同時に、

 

「聞こえたよな?」

「聞こえたよな?」

 

俺は気味が悪くなり、

 

Bにバックミラーで後ろを

確認してくれと頼んだ。

 

Bは嫌々ながらも確認し、

 

「なにもいねーぞ」

 

と言った。

 

俺は後ろを振り返り、

自分の目で確認したのだが、

 

何もいない。

 

でも聞こえたよなと、

Bと話していると、

 

『おーい、ここだよ・・・』

 

Bはスピードを緩め、

二人で声の方を確認した。

 

全開にしている

サンルーフに目をやると、

 

男がしがみ付きながら、

ここだよと笑っていた。

 

それを見た二人は

大声を上げ、

 

Bはアクセルを全開にしながら、

サンルーフのボタンを押していた。

 

驚きのあまり、

しばらくは黙っていたが、

 

Bはまったくスピードを落とす

気配が無かったため、

 

声を掛け、

スピードを落とすように促した。

 

しばらく走り、

 

二人とも落ち着いて

話し始めた。

 

「子供の声で、あれはねーよな」

 

などと話しているうちに

燃料が切れそうなのに気づいて、

 

通りのスタンドに車を入れ、

 

ついでに飲み物でも買おうと

二人で車外に出て、

 

ふとサンルーフに目をやると、

10本の引っ掻き傷が出来ていた。

 

それを見たBは、

 

「せめて手形にしてくれよ」

 

と、うなだれていた。

 

帰りのプレリュードは

喫煙車に変わっていた。

 

ドライブから1ヶ月が経過した頃、

Bから電話があり、

 

話があるから会いたいという。

 

断る理由もないので、

俺はOKを出した。

 

9時頃着くから駅まで

迎えに来てくれと頼まれて、

 

おかしいなとは思いながら、

俺は車で駅に向かった。

 

駅でBを拾い、

 

「歩きなんて珍しいな」

 

そうBに言うと、

Bは一枚の葉書を見せながら

 

「免停」

 

それを聞いて、

俺は笑い出してしまった。

 

部屋に着いて詳しく聞いてみると、

オービスでやられたらしい。

 

39キロオーバーだそうだ。

 

Bによると、

 

そこにオービスがあるのは

前から知っていたため、

 

そこでは必ずスピードを

落としていたのだが、

 

その日は何故か

ボケッとしていたらしい。

 

本人は妙な感じになっていた

と言うが。

 

オービスの前を通過した瞬間、

赤い閃光が走り、

 

その光で、

Bは我に返ったらしい。

 

それから2週間ほど経ち、

出頭命令の葉書が届き、

 

呼び出しに応じて、

今日出頭したそうだ。

 

否定する材料もないので、

 

全て「はいはい」で

済ませるつもりでいたのだが、

 

「これがその時の写真です」

 

そう言われて

1枚のコピーを見せられ、

 

「なんだこれ?」

 

と思ったらしい。

 

一人で乗っていたはずなのに、

隣に誰かがいる。

 

それも、見た事もない女。

 

Bは、

確かにスピード違反はしたが、

 

その時は一人だったと

警察官に主張した。

 

そう言われた警察官は、

あっさりと

 

「彼女がいっぱいいると大変だね」

 

と笑い飛ばされたらしい。

 

どんなに写真を見ても

思い出せない。

 

Bは焦りながら、

何度も写真を見直したそうだ。

 

それを聞いて俺は、

 

「ほんとに誰も乗せてなかったのか?」

 

と尋ねたが、

 

Bは乗せてないの

一点張りだった。

 

Bに、どんな風に写っていたのか

を聞いてみた。

 

Bによると、

 

その女は、じっとBを

見つめていたらしい。

 

しばらくしてBは呟いた。

 

「心霊写真かな・・・」

 

それを聞いて俺は、

 

「それしかねーよな」

 

そう答えるしかなかった。

 

Bは、あの車がいけないのかも

知れないと言い始め、

 

俺は「新車だからそれはないよ」

と、なだめた。

 

するとBは俺を見ながら、

 

「今からお前の車で試さないか?」

 

と言われたが、

俺は丁重に断った。

 

免停も終えたBは、

 

仕事で都内隅田川沿いに建つ

マンションの完成予備検査で、

 

指摘された箇所の補修のため

後輩とマンションに向かった。

 

Bの仕事は

電気工事の代理人で、

 

補修といっても電球の球を

交換する程度のものだったらしい。

 

現場に着き、

 

塗装屋の車の隣にプレリュードを入れ、

作業に取り掛かった。

 

そのマンションは20階建て以上で、

2棟が連なるタイプだった。

 

車を止めた側の反対に位置する棟から

作業を始めたらしい。

 

30分程経った頃、

作業を終えた部屋から出てくると、

 

外が救急車の音で

騒がしくなっていた。

 

それが隣の棟であることに気づいたBは、

後輩と共に隣の棟に急いだ。

 

駐車場に向かうと、

 

工事関係者で人だかりが出来、

よく見えない。

 

後ろにいた関係者に聞いたところ、

 

塗装屋さんが19階の廊下の補修中に、

バランスを崩し転落したのだそうだ。

 

ほぼ即死だったらしい。

 

それから救急車が出ていき、

 

転落場所が気になったBは、

人を掻き分け前に出ると、

 

そこには無惨な形の

プレリュードの姿があった。

 

屋根は無惨な形に凹み、

 

フロントガラスの部分には

大量の血が流れていた。

 

Bはその場にへたり込み、

 

思わず、

 

「塗装屋さん、せめて

もう少し横だろ・・・」

 

そう呟いたらしい。

 

気持ちはよく分かる。

 

Bは知り合いの修理工に、

プレリュードを売り渡した。

 

俺達はてっきり廃車だと

思っていたのだが・・・。

 

今、そのプレリュードは

白に生まれ変わり、

 

都内の中古車屋に流れたそうだ。

 

この車は次のオーナーに、

どんな奇妙な現象をもたらすのだろう。

 

(終)

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