駐車場に停まっていた車の後部座席に
10年くらい前の話になるが、母の職場に荷物を届けに行った時の事。
職場の前には駐車場があるのだが、そこに停まっていた1台の車にふと目が行った。
よくよく見てみると、後部座席にロングヘアの女性と金髪の若い男性が座っている。
その二人をなんとなく眺めていたら、1分程したところで「あれ?」と思った。
どうしてあの人たちはあの車の中に
というのも、その日は8月だというのに、エンジンの切れた車内で窓も開けずにいた事と、二人とも前屈みの姿勢のまま微動だにせず固まっていたからだ。
それに気づいた瞬間、「あ、これ生きてる人じゃない」と直感した。
私はゾッとして、すぐに母の職場に逃げ込んだ。
後日に母から聞いたのだが、その車は母の同僚の車だった。
私がその二人を目撃してから数日後、同僚がお守りを神社に貰いに行った。
その際にその車を運転して行ったらしいのだが、神主さんが車を見るなり、「ああ・・・人、乗ってますね」と言われたそうで。
私が見た二人に加え、助手席にもおじさんが乗っていたらしい。(私は気づかなかったが)
同僚は震え上がってしまい、その場で車のお祓いをしてもらったそうだ。
実は、母は同僚と外回りに行く際に、同僚の車には決して乗ろうとはしなかった。
なぜなら、母にも見えていたからだという。(母はロングヘアの女性しか見えなかったらしい)
お祓いをした翌日、同僚が母に「あんた見えてただろ!」と突っ込んできたそうで・・・。
でも、同僚の車は中古ではなく『新車』だった。
乗っていた三人にも、同僚には全く心当たりが無いそうで。
曰くつきの中古車でもないのに、どうしてあの人たちはあの車の中にいたのかな・・・と、私は不思議に思った。
(終)