夢の中で私に何かを伝える男
ある一人の男が、
遠くから私に何かを伝える
夢を見ました。
夢の中の私は、
何か得体の知れない恐怖感で
男に近づくことが出来ず、
結局、何を言っているのか、
聞くことが出来ませんでした。
友人が死んだ日も、
同じ夢を見ました。
夢の男は、友人でした。
目が覚めた時、
こういうことは実際にあるんだぁ、
と思いました。
翌日、
同じ夢を見ました。
今度は、
男が友人であることが
分かっているので、
恐怖感はなく、
私は近づくことが出来て、
何を言っているのかが
聞き取れました。
友人は、
「スキマダヨ」
と言って消えました。
消える瞬間、一瞬だけ
ニヤついたのが気になりました。
スキマの意味が分かったのは、
タンスや冷蔵庫と壁などの狭い空間、
つまり『隙間』のことでした。
今、私の家には、
隙間と呼べる場所は
ガムテ-プなどで閉じて、
一つもありません。
ガムテ-プを剥がすと、
血に染まった真黄色の
ワンピ-スを着た女、
両手の無い
赤靴の女の子、
七五三の格好をした
目の無い男の子、
顔の爛れた首だけの女に
見られるからです。
死ぬ前に友人は、
「誰も隙間から霊に見られていることに
気づいていないんだよな・・・」
と言っていました。
(終)