一人暮らしを始めた部屋に 2/2

ノート

 

そこには確かに、

俺の部屋が映っていた。

 

そして冗談でもなんでもなく、

俺の部屋にいた女の姿も・・・。

 

見れたもんじゃない体型に、

ビチビチのジーパンとTシャツ。

 

いわゆる、醜女。

 

そして、

 

何故かぼやけて

よく見えない顔。

 

Iが無言で次々と

画像を送っていく。

 

廊下から出てきた女が、

 

俺の部屋をぐるぐると

何かを探すように回り、

 

引き出しからボールペンを

取り出して机に置いた後、

 

満足そうに去っていく様子が・・・。

 

I「分かったろ?

 

マジで居たんだよ。

 

とにかくお前はもう、

家に帰るな。

 

今までは平気だったけど、

 

これからも何もないって保証は

どこにもないぞ?」

 

恐怖で泣いたのは、

これが生まれて初めてだった。

 

体がガクガク震えて、

顔が熱くてたまらない。

 

失禁寸前のところで、

 

Iに支えながらトイレに

連れて行ってもらい、

 

そこで喚き散らした。

 

ひと暴れして落ち着くと、

Iはこう言った。

 

I「まぁ、あれだよ、あれ、

こういうのは稀にいるんだ。

 

そういうことにしとけ。

 

これはこの部屋から出てくる

ことはないはずだから、

 

お前はもう部屋に戻るな。

 

で、新しい部屋を探せ。

 

その間くらいは

こっちで面倒見れる。

 

新しい部屋が見つかったら、

俺とKで引越し作業するから。

 

それでいいだろ?」

 

翌日のバイトは休みをとって、

俺は不動産屋を駆け巡った。

 

もう怖くてしょうがなく、

 

一秒でも早くあの部屋から

縁を切りたかった。

 

幸いにも午前中には

契約が取れて、

 

午後にはあの部屋の解約手続きに、

踏み切ることが出来た。

 

『何か問題でもありました?』

 

と、やたらとしつこく

聞かれたあたり、

 

こういうことは初めて

だったのかも知れない。

 

とにかく今よりいい条件の

部屋を紹介されたから、

 

先着だからと時間がなくて

思わずそっちに申し込んだ。

 

最悪の状況を何とか切り抜け、

2日後には引っ越すことが出来た。

 

その間は何の問題もなく、

 

突然引越しの手伝いで

一日をふいにしたKも、

 

多少の文句は言いつつ、

特に問い詰められることはなく、

 

無事にあの部屋から

離れることが出来た。

 

新しい部屋に変わってからも、

しばらくはビクビク怯えていたけど、

 

何事も1週間も過ぎると、

ようやく調子を取り戻してきた。

 

それから少し経って再び

ファミレスで集まることになり、

 

Kにようやく今まで起こった

ことを説明した。

 

Kは怖い話を本当にあった話だと

信じてしまうような人間なので、

 

K「むしろ、それヤバクね?」

K「次は俺らが呪われるんじゃね?」

 

とか、一々こちらを不安に

させるようなことを言う。

 

そんな時、

 

Iが一枚の紙を

テーブルの上に置いた。

 

I「この紙、何だかKは

分かるよな?」

 

K「ああ、引越しの時に

机の上に置いてあった紙?」

 

I「これさ・・・

真っ白い紙に見えるけど、

 

よく見ると文字が書いて

あるんだよ」

 

Iはもう一枚、

似たような紙を取り出すと、

 

さっきの紙の上に重ねて、

 

バッグから取り出した鉛筆で

ガリガリ擦り始めた。

 

そうして紙に浮かび

上がったのは、

 

『さびしい、いたい、さびしい、いたい』

 

そんな言葉がしばらく

続いてたが、

 

単語がノートの半分を

過ぎた辺りで、

 

『さびしい、いない、さびしい、いない』

 

に変わり、

 

最後の方になると、

 

『しね、しぬ、しね、しぬ、しね』

 

見ていて頭が痛くなるような

文字に変わっていた。

 

最初の方は薄くて全部は

読めないものも多かったが、

 

最後の方にはしっかりと

文字が浮かび上がっていた。

 

I「一応調べてみたんだけどさ、

 

あのアパートで死んだとか

自殺したって人は、

 

新聞とかネットの情報では

いなかったよ。

 

あいつが何だったのか?

って聞かれると困るけど、

 

多分、D(俺)と馬が合った

っていうのかな?

 

そんな感じだと思う。

 

事故みたいなもんなんだよ、

きっと」

 

その後、

誰が言ったわけでもなく、

 

3人ともその話を止めてカラオケに行き、

3人でまた一晩泊まって終わった。

 

あれから今まで、

何の問題も起きていない。

 

(終)

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