北海道に生息するヒグマの怖い話 2/2

ヒグマ

 

五日目。

 

鳥の声で目が覚めるが、

霧は晴れていないのだろう、薄暗い。

 

ヒグマの臭いは途絶えていない。

 

どこかで、もしくはテントのすぐ側で

様子を窺っているのか。

 

皆が黙りこくっている。

 

沈黙が数時間。

 

昼頃、足音が復活。

 

しばらく歩き回った後、

また消える。

 

夕方、

Dが勇気を振り絞って、

 

僅かにテントの口を開けて、

外の様子を窺う。

 

「霧が、少し晴れている」

 

僅かに太陽の光が届き、

晴れる兆しが見えた。

 

すぐに降りるべきだ、

と主張する側と、

 

明日まで待つべきだ、

という側に分かれた。

 

まだクマがすぐそこに居るかも知れないし、

今から下山を開始すれば、

 

夜を休憩も出来ないような登山道の途中で

迎えることになるのは明白だった。

 

完璧に霧が晴れたわけでもない。

 

悪天候で、

 

しかも夜に慌てて行動するのは

事故の元だ。

 

リーダーとして、

下山を許すことは出来なかった。

 

恐怖の中、

冷静な判断だったかは分からない。

 

ともかくも、

その日はそれで日が暮れた。

 

誰も会話をしない。

 

恐怖からだけでなく、

 

パーティの考えが対立したことに、

大きな原因があった。

 

その晩もクマは周囲を巡り、

時折追突をしてきた。

 

誰も眠らない。

 

六日目。

 

昨日の晴れる兆しが嘘のように、

霧が濃い。

 

朝起きても、終始無言。

 

クマを刺激しないよう、

誰もものを食べない。

 

しかし、

今朝からは周囲は静か。

 

臭いも薄らいだように思う。

 

数時間後、

Cが「外に出る」と言い出す。

 

皆反対するが、

 

「様子を見るだけ。

クマも今なら近くには居ない」

 

と言って、

Cは許可を求める。

 

すぐに帰って来るのを条件に、

私はそれを許した。

 

Cが霧の中へ入っていった後、

 

Bは私を非難したが、

そのうちに黙る。

 

しばらくして足音。

 

Cの帰りを期待した私達は

テントを開けようとしたが、

 

すぐに手を止めた。

 

獣の臭いがする。

 

Dがか細い声で「Cは?」と言った。

 

獣の鼻息が昨日に増して荒い。

 

すぐに追突が始まる。

 

私達は声にならない悲鳴を上げて、

身を寄せる。

 

しばらく周囲を巡ったのち

クマは腰を落ち着かせたか、

 

足音は消えるも

臭いは相変わらず強い。

 

その日一日、

 

クマの臭いが途切れることは無く、

私達は動かなかった。

 

Cは帰って来ない。

 

襲われたんだろうか。

 

ここから少しずつ、

日記の筆跡に乱れが見え始める。

 

漢字も平易、

ひらがなが増えていく。

 

七日目。

 

今日も、霧がこい。

 

はらごしらえか、

クマの気配が消える。

 

しばらくの沈黙の後、

Eが山をおりる、と言い出す。

 

寝不足から目が血走って、

声はヒステリック。

 

説得をこころみるも、きかず、

 

「おりたら助けを呼んでくる、

待ってろ」

 

と、Eは荷物を持って霧の中に消えた。

 

5人いたパーティは、

A、B、Dの3人になった。

 

クマのいないあいだに、

カロリーメイトなど栄養食を食べる。

 

会話はなし。

 

時間がすぎる。

 

昼頃、外を見るが、

霧は晴れない。

 

日ぐれ頃、

クマがやってくる。

 

中央に固まって、

クマのしょうとつに耐える。

 

湿気がはげしく汗がでるが、

 

みな震えて、

なんとか声は出さずにいる。

 

Eは下山できただろうか。

 

八日目。

 

霧ははれない。

 

朝になると

クマの気配は消えていた。

 

だれも「下山しよう」とは

いいださない。

 

たまっていた日記を書いて

気をまぎらわす。

 

この日記を持ってぶじにかえりたい。

 

14時ごろ、Bが狂った。

 

はじめに笑い出して、

かんだかく叫んだあと、

 

笑いながら何ももたずに

テントをとびだしていった。

 

きりの中に彼を見送って、

しばらく笑い声をきいていたが、

 

それもそのうち小さくなった。

 

Dがしずかにゆっくりと

テントの口をしめ、

 

「いったな」

 

と、久しぶりにDの声をきいた。

 

そのよるもクマが来た。

 

私たちは二人だき合って、

よるが明けるのをまった。

 

九日目。

 

今日も、きりがこい。

 

クマはしばらく近くにいるようだったが、

ひるごろどこかへいった。

 

中央でかたまったまま、

すこし眠る。

 

ひどくしずかだ。

 

夕方、

クマのあしおとでおきる。

 

ついとつされると泣きさけびたくなるが、

どうにかたえる。

 

かえりたい。

 

クマはなぜ、

おそってこないのだろう。

 

十日目。

 

きょうもきりがこい

 

ごご、Dがたちあがって

しずかにでていった

 

とめなかった

 

きりがはれない

 

クマはよるおそくにきた

 

きがくるいそうだ

 

十一日目。

 

きょうも きりが こい

 くまは いる

 

十二日目。

 

今日も霧が濃い。

 

Aの日記はここまで。

 

このパーティの登山届は

事前に警察に提出されていたため、

 

異常事態は発覚していた。

 

しかし稀にみる悪天候に、

ふもとの警察は捜索をしあぐねていた。

 

天候が復活し発見されたのは、

無人のテントと荒らされた荷物。

 

そして日記。

 

最初に出て行ったCは、

 

テントから50メートルほどのところで、

遺体で発見された。

 

喉の傷が致命傷となり即死。

 

次に出て行ったEは、

登山道の途中で崖から滑落。

 

遺体で発見。

 

Bは一キロほど離れた場所で、

無残に食い散らされていた。

 

Dはルート途中の崖下から、

遺体で発見。

 

Aは行方不明である。

 

以上が、

俺が友人から聞いた話。

 

実はこの話、

 

北海道で山を登る人たちの間で

一時期流行った都市伝説なのだそうだが、

 

実際にクマに襲われて

壊滅したパーティはあったようだ・・・

 

とも友人は言った。

 

その人たちは、ほぼ素人。

 

登山届けも提出せず、

発見も遅れた。

 

現場の状態から、

 

どうやらクマに荷物を奪われたところを、

取り返しに向かい返り討ちに遭ったらしい。

 

北海道のフィールドを歩く時には、

どうか、クマにはご注意ください。

 

(終)

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