霊に好かれやすい体質

路地裏

 

俺の友人であるYは、

 

霊感のある人から見ると、

霊に好かれやすい体質なんだそうだ。

 

そのYが、友人たちと夜中に

飯を食いに行った時のこと。

 

よくあるセルフうどんを食って、

いつものように近道をして帰ろうとしたんだ。

 

その近道というのが、

 

そのうどん屋の後ろにある

路地裏みたいなところで、

 

粗大ゴミやら生ゴミやらの色んなゴミが

散乱しているんだ。

 

その路地裏は、

 

昼間に通っても何ら変わりのない

ただの道のように感じるんだけど、

 

夜は少し薄気味悪いような印象を受ける。

 

正直、

あまり近づきたくない道なんだ。

 

でも、Yの家に帰ろうとすると、

 

その道を使うのが一番早いから、

よくそこを利用していたらしい。

 

その時は友人も一緒だったし、

特に恐怖心も無かったそうだ。

 

「あそこの店、意外と旨かったなあ」

 

みたいな話をしながら、

その道を歩いていたY達は、

 

ふと横にあった粗大ゴミのソファーを、

友人の一人のAが蹴り始めた。

 

夜のテンションで意味はないのだが、

そのソファーを三人で蹴ったんだ。

 

それに続いて、

もう一人の友人Bも蹴り始めた。

 

Yは他二人が蹴り始めたので、

一緒になって蹴ったと言っていた。

 

が、すぐに興味を失って、

蹴るのをやめたそうだが。

 

その後、

 

他二人もすぐ蹴るのに飽きて、

帰り道を歩いていた。

 

すると、そこにYの母から

電話がかかってきた。

 

「早く帰って来なさい」

 

みたいな内容の電話で、

 

すぐに切ったYは、

また歩く足を速めた。

 

すると、左から突然、

 

「だれから?」

 

と声が聞こえた。

 

Yは友人だと思い、

 

「親から。早く帰って来いってさ」

 

と返した。

 

しかし、ふと気づいたんだ。

 

Yは友人二人と帰っていたが、

その友人たちは右隣にいるんだ。

 

左から声が聞こえるはずがないんだ・・・

 

すぐにおかしいと気づいたYは、

友人Bに話題を振った。

 

「なあ、こういうところって、

結構出そうだよな?

 

意外と近くにいたりしてな」

 

実は、このBは霊感が強く、

Yの体質についても知っていた。

 

というか、

 

霊に好かれやすい体質だ、

と指摘した本人だった。

 

Bはすぐに、

 

「いねえよ。気にすんなよ(笑)

 

と軽い調子で返してきた。

 

Yはそれで安心して、

 

気のせいだったんだ、

と思うことにしたんだそうだ。

 

だけど、

その路地を抜けた手前くらいの所で、

 

Yは喉が渇いたからと

ジュースを買いに行こうとした時、

 

突然Bが耳打ちしてきた。

 

「お前、いま憑かれてる。

 

ああいう場面で聞くな。

語りかけられても反応しちゃダメだぞ。

 

そいつの存在が強くなるからな」

 

の一言で、

Yの身体は凍りついた。

 

本人曰く、

泣きそうだったそうだ。

 

Yはとにかく焦って、

早足に自販機まで行った。

 

ジュースを買って、

出てきた缶を取ろうとした、その時、

 

「なにえらんだの?」

 

屈んだまさにその瞬間だったそうだ。

 

Yは内心震えながらも、

 

Bの言った通り、

反応せず無視した。

 

ジュースを取って、

何事も無かったように後ろを振り向いたが、

 

やっぱり誰もいなかったそうだ。

 

すぐBに、このことを小声で話すと、

 

「お前、親に来てもらえ。

連絡はメールでしろよ。

 

声を聞かれたら乗り込んでくるかも

知れんからな」

 

YはすぐにBの言う通り、

親に連絡した。

 

・・・頼むからすぐに来て、お願い、

という内容に、

 

親もどうしたんだとすぐに来てくれたそうだ。

 

Yは親の車にサッと乗って、

 

B達は「じゃあな」と一言言い、

車の方を見ていた。

 

すぐにドアを閉めたその瞬間、

ふぅ・・・と一息ついた。

 

ようやく安心できる、

と心の底から親に感謝した。

 

その時、

Bからメールから届いた。

 

「ヤバイ、

車に一緒に乗り込んじまった。

 

お前、今夜は気をつけろ。

窓とか鏡を見るなよ。

 

窓もカーテンも閉めて、

すぐに寝ろよ。

 

出来るだけ誰かに

一緒に居てもらった方がいいけど、

 

それがダメなら電気は点けとけ」

 

この時のYは、

もう本気で泣きそうだった。

 

あとで親に聞いたら、

 

泣きそうで事情を聞くのはよくないと思った、

と言われたそうだ。

 

車の中は、やけにヒンヤリとして、

 

あまりいい雰囲気じゃないことが、

Yにも分かった。

 

俯きながら、早く家に着いてくれ!

と心の底から祈っていた。

 

やがて家に着き、

車のドアを開けようとした時、

 

その車の窓には一瞬だが、

女の顔を見た気がした。

 

もう心臓はドキドキしっぱなしで、

 

冷静を装いつつも、

早足を止めることは出来なかった。

 

それからは自分の部屋に行って、

風呂に入ってすぐに寝たそうだ。

 

別に何事も無かったそうだ。

 

Yは始終びびっていたようだが、

 

翌日学校に登校した時には、

もう消えたんだと安心していたそうだ。

 

教室で、「昨日はすまんかったな」

とBに言うと、

 

「何も無かったか?

・・・まあ、まだ憑いてるんだがな」

 

Yは、「え!?え?」と、

また怯え始めたが、

 

「ごめん、ウソウソ(笑)

さすがにもういないよ(笑)

 

というBに、

昨日、何故憑かれたのか聞いた。

 

「多分だけど、

昨日の帰り道にソファーあったろ?

 

あれを蹴った時に

憑いたんじゃないかと思うんだ。

 

俺、最初はAが蹴るまでソファが

あったことなんて気づかなかったんだ。

 

最初に憑かれてたのは、

多分Aだったんだろうな。

 

でも、最後にお前が蹴っただろ?

お前の体質に惹かれたんじゃないかなあ」

 

なるほど・・・

 

確かにAが蹴り始めるまで

ソファの存在なんて気づかなかった、

 

と納得したらしい。

 

では、何故離れたのか?と聞くと、

 

「うーん・・・

 

お前が家にいる間の時間で、

気に食わないことでもあったんじゃないか?

 

お前なんかやらなかったか?」

 

その一言で、

思い当たることが一つあったそうだ。

 

霊というのは不浄なものや・・・

まあ、そういう行為を嫌う傾向がある、

 

というのを聞いたことがある。

 

「恐らくそれだろうな。

 

しかし、自慰で祓うとか、

聞いたことねえよ(笑)

 

とBは笑っていた。

 

Yは笑い事じゃなかったらしいが。

 

(終)

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