同僚が持っていた開かずの箱 1/2
私が9年前から
苦しめられ続けている
後悔と恐怖の記憶を、
この話しを読んだ人に
ほんの少しづつでも
持っていってもらえれば
いいなと思っています。
実際に何かが憑くわけでは
ありませんが、
そう記述する事で
私自身の記憶の影が、
ほんの少しだけ
明るくなるので・・・。
それは、
9年前の体験。
私は某保険会社に入社し、
3年目に突入した矢先の
出来事でした。
私は係長になり、
4人の部下が居て、
その中の3人(I君・T君・Yさん)
と週に2回は、
欠かさず飲みに行く
くらいの仲でした。
残りの一人は、
この物語には関係無いので
省略させてもらいます。
その日も、
私達は4人で行き付けの
居酒屋で食べた後、
割り勘で支払いを済ませて
帰る途中でした。
いきなりI君が、
りんご一個がちょうど
入るくらいの大きさの、
見るからにボロボロな
木箱を取り出して、
みんなに見せてきました。
それは、
変な仕掛けのある箱で、
以前に流行った
ルービックキューブのように、
色(木目)がきちんと
合うように揃えると開く、
という箱でした。
彼が言うには、
父から貰ったもので、
随分と昔の物らしいです。
なんでも、
戦争前からあったそうです。
I「父は開けれないし、
どうせ戦後の焼け跡で
拾ったものだから、
と僕に譲ってくれました」
と言ってました。
二世代隔てた今でも、
彼はその箱を未だに
開けられずにいるそうです。
私はその箱を見た時から、
なんとなく言いようの無い
悪寒を感じていました。
私は霊感がある方
なのでしょうか・・・
時々、上半身と下半身の
釣り合いが取れてない人とか、
足の足りない(もしくは無い)
小動物等を、
見かけることがあるのです。
なので私は、
T君とYさんが代わりばんこに
その木箱の節目をずらしたり、
引っ張ってみたり
しているのを見ていて、
何故かヒヤヒヤしていました。
開け放ってしまうことを、
私の霊感が恐れて
いたんだと思います。
結局、
その日はその木箱は
開きませんでした。
店を出て帰りのタクシーが
捕まるまでの5分間くらいしか
時間が無かったので、
さすがに無理でした。
その後、
その日は全員何事も無く
帰宅しました。
次の日、
I君が前日に私以外の
2人に好評だった木箱を
会社に持って来て、
昼休みにデスクワークを
していた私の元へ、
T君とYさんを連れて
やって来ました。
私はその途端、
付き合いが悪いと
思われるのを覚悟で、
彼らに忠告しました。
私「その箱は開けない方が
いいと思う」
I君は訝しげな顔をしながら
僕に、
I「兄と同じことを言うんですね」
と返しながらも
得意気に、
I「きっと近いうちに
開けて見せますよ」
と言って、
デスクワークをしている
私に気を遣い、
それきり昼休みは
話しませんでした。
そして、その日の
仕事が終わった後、
4人で桜見をしよう
ということになり、
Yさんのお母さんの差し入れの
筑紫のお吸い物をすすりながら、
近くの公園で夜桜を
堪能していました。
そんな時にT君が、
T「この素晴らしい風景を、
4人一緒に写真に収めておこう!」
と言って
ポラロイドカメラを出し、
それで一際幹の太い
立派な桜をバックに
写真を撮りました。
見事な写真が撮れました。
でも、変なんです・・・。
夜だから余計な光が入る
心配も無いし、
拓けた場所だから、
フラッシュが反射して変色する
心配も無いんですけど、
写真がなんとなく薄い赤色を
全体的に帯びているのです。
T君は「こういうこともあるさ」
と言って、
もう一回全員で
写真を撮りました。
しかし、
またも同じ現象が
起こったのです。
T君は、
T「広い範囲で撮るから
余計なものが入るのかも知れない。
フィルムに余裕はあるし、
一人づつ撮ろう」
と言って、
私、Yさん、I君、T君の順番で
撮ることになりました。