空中を移動する真っ白い女
本当の話なので支障のない程度に
道路の名前や地名だけは書きました。
東京の多摩地区の人には、
わかると思いますが・・・。
10年ぐらい前の6月か7月の始めぐらい
だったと思います。
梅雨の時期で、昼ぐらいから
雨が降っていました。
義父が雀荘の店長だったので
お店に遊びに行ったんです。
たぶん会社が休みだったので
土曜日だったと思います。
店についてから義父と食事に行くことになり、
仕事が終わるのを待って出かけました。
店を出たのは夜中の0時ごろ
だったと思います。
次の日は用事があったので
「飲みに行こう」と誘われたのですが、
断って家に帰ることにしました。
牛浜の駅を通り過ぎたころに、
なんとなく「16号から五日市街道に出て、
横田基地の裏の道から、東大和方面に
向かって帰ろう」と思いました。
その日降っていた雨が上がったばかりで、
路面は濡れてちょっとモヤっていました。
五日市街道から横田基地の裏の道に入り、
90度右に曲がるコーナを抜けると
すぐに信号機があります。
ちょうど赤だったので車を止めて
青になるのを待ちました。
前妻と他愛のない話をしているうちに
信号が青になったので、
車をゆっくり発信して左折。
さらに横田基地の裏を行こうと
アクセルを踏もうとした瞬間、
前妻が急に黙ってしまったので
「なんだろうと?」と思って
アクセルから足を離し、
前妻の顔を見ました。
前妻は口をパクパクしながら
空中を凝視していました。
「はぁ?」と思った私は、
ちょっと身を乗り出して空を見上げました。
そこには真っ白い、全てが真っ白い
女の人が横田基地の方に向かって
空中を移動していました。
歩いているのではなく、スーっと
滑るような感じで移動していたんです。
女の人の足元は、白い炎のような感じで
ユラユラというかヒラヒラというか、
そんな感じでした。
「この女がこちらに気がついたらヤバイ」
と思ってアクセルを床まで踏み込んで、
窓を全部閉めて逃げました。
バックミラーやルームミラーは
怖くて見れませんでした。
あれほどハッキリと姿を見て、ヤバイ!
と思ったのは後にも先にもそれだけでした。
「あの女」のせいとは言いませんが、
その後、前妻は自律神経失調症で
精神科に通いました。
たまに「見えるとか」言い出したりして。
その後、二人とも上手く行かなくなり、
1年後ぐらいに離婚しました。
(終)