校内に漂う謎のちくわ臭
私が中学生の時の音楽のM先生は、
若くて小柄でさっぱりした感じの女性だった。
臨時採用だったのか、
半年くらいしかいなかったけれど、
授業中に時々怖い話をしてくれた。
そんな先生がしてくれた、
一番印象に残っている話です。
先生が小学生だった頃の、
夏休みを目前に控えた時期。
学校のどこかから、
変な臭いがするようになった。
当初、臭いは大したことなかったので、
みんな全然気にしていなかったけれど、
徐々にその臭いは強さを増し始めた。
それは『ちくわの臭い』だった。
なぜだろう・・・
学校のどこにいても、
ちくわの臭いがする。
先生たちもさすがに動揺し始め、
なぜちくわの臭いがするのかを調べ始めた。
まもなく夏休みに入り、
子どもたちが学校にいないうちに、
給食室を調べることになった。
食品を保管している大きな冷蔵庫を
調べるとちくわがあったので、
それを処分することにしたが、
別にそのちくわは普通のものと変わらず、
凄い臭いを発しているわけではなかった。
仕方がないので給食室に加え、
衛生的な面を考えてトイレを業者に頼み、
徹底的に消毒することにした。
夏休みが明けると、
ちくわの臭いは酷くなっていた。
子どもたちは噂でちくわ処分や
消毒の話を聞いていたから、
臭いは無くなっているものだと
思っていたのだ。
ある日の昼休み、
グラウンドでサッカーをしている生徒が、
転がってしまったボールを追いかけて、
学校脇の竹薮に入っていった。
するとそこには、
人の腐乱死体があった。
そして、強烈なちくわの臭いが、
辺りに充満していた。
(終)