昼でも夜でも「出る」と噂のある学校にて
これは、俺が中学生の頃の話。
クラブ活動の部長だった俺はその日、仲の良い二人の後輩を先に部室から出して戸締りをしていた。
先にと言っても数分程度なので、早足で後輩らに追いつき、一緒に下校しようと思っていた。
そして戸締りも終わり、部室から出た時だった。
廊下の階段の手前で、冬服のセーラー服を着た”おさげ髪の女子”が歩いているのを見つけた。
てっきり後輩の一方だと思い、走って追いつこうとした。
ちなみに、この学校の階段は以下のようになっている。(大抵どこもほぼ同じだと思うが)
3階 \
踊り場 -
2階 /
俺はその時、3階からの階段を下りようとしていたら、その女子はちょうど踊り場から2階への階段を下りようしていた。
部室は3階にあったので、1階に下りるまでにそれが2回繰り返された。
足音がしているんだから上見て足を止めてくれればいいのに、なんて思いつつ追いかけていたら、1階まで下りたところで後輩二人が待っていてくれた。
俺「あれ?ついさっきここ下りて行かなかったっけ?」
後輩A「何言ってるんですか~。とっくに階段を下りてここで待ってましたよ?」
俺「じゃあ、誰か下りて来なかった?」
後輩B「誰も来ませんでしたけど?」
俺「おっかしぃーなぁ。さっき階段下りていた冬服姿の女子が」
後輩A「あの~先輩、何言ってるんですか?だって…」
そこでハタと気がついた。
季節は6月末、俺も後輩二人も着ているのは夏服だ。
それにこの学校の女子の夏服は、セーラー服ではなくてブラウスに吊スカート。
冬服のセーラー服を着た女子なんて居るわけがない。
もし居たとしても、先に1階で待っていた後輩二人が見かけていないのもおかしい。
本当に洒落にならないほど怖かった。
もちろん後輩らも怯えてしまった。
ただ、この中学校はかなり歴史も建物も古く、そのせいか『昼でも夜でも出る』との噂はあった。
長年勤めている先生に話をしてみたところ、こんな答えが返ってきた。
「誰も居ない教室から足音がしても笑って済ましてるよ」
(終)