もしあの時・・・助けに行っていたら

パトカー

 

心霊的なものではないが、

恐ろしかった体験談を。

 

まだ俺が院生の頃、

 

レポート作成に毎日追われて

深夜まで起きていた時、

 

外から女性の悲鳴が聞こえてきた。

 

ふと部屋の窓から覗くと、

女性が若い男数人に襲われていた。

 

頃が夏で暑かったのもあり、

 

シャツにパンツ一丁だったので、

急いで服を着ていたら、

 

向かいの家の人が木刀みたいな物を持って、

助けに行っていた。

 

女性は軽傷で済んだらしく、

向かいの家の人にお礼を言って、

 

駆けつけた警察から

事情聴取を受けるために、

 

パトカーに乗って行った。

 

結局、その時の犯人は捕まらず、

逃げ去ってしまった。

 

ひと段落した後、

 

俺はレポート作成に集中できず、

眠りにつく事にした。

 

その翌日、

 

大学から帰って気を取り直して

レポート作成に打ち込んでいると、

 

警察が訪ねてきた。

 

内容はもちろん、

 

昨日の通り魔についての

注意の呼びかけだった。

 

それから数日が経ち、

 

レポート作成も大詰めに入っていた時に、

また外から女性の悲鳴が聞こえた。

 

外を見ると、

やはり女性が二人の男に襲われていて、

 

この時も向かいの人が

木刀を持って行ったのだが、

 

この前と違って犯人たちは抵抗し、

路地裏までもつれ込み、

 

俺の視界から完全に死角になっていた。

 

その後も大きな怒声が聞こえたが、

すぐに止み、

 

路地裏からは車が一台、

猛スピードで飛び出して行った。

 

俺はその後すぐに服を着て、

外へ出た。

 

現場にはパジャマ姿の野次馬が

たくさん居たのだが、

 

向かいの人は見当たらなかった。

 

隣人の女性から話を訊いてみると、

どうも犯人に連れて行かれたとの事。

 

それを聞いた俺は、

背筋が凍りつくような思いがした。

 

すぐに警察が駆けつけ、

事情聴取を受けた。

 

幸いなことに、

車のナンバーを見ている人がいた。

 

すぐに犯人の自宅が特定され、

御用となったのだが・・・

 

連れ去られた向かいの人は、

既に殺されていた。

 

後になって聞いたのだが、

 

向かいの人の同居人の話によると、

犯人たちはあの時、

 

向かいの人に追い払われたのを

根に持っていたようで、

 

(おとり)の女性を使ってまでして

おびき寄せたそうだ。

 

もし、あの時・・・

 

俺が先に助けに行っていたら、

殺されていたのかも知れない。

 

(終)

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