深夜の山奥で遭遇した母子

山道

 

一昨年の夏休みの出来事。

 

車でアテのないぶらり一人旅を

していたんだけれど、

 

新潟から長野へ向かう途中、

山奥で道に迷ってしまった。

 

高速代を浮かす為に勘のみで

見知らぬ峠道を走ってみたんだけれど、

 

案の定、ハマってしまった。

 

時間は深夜をまわっていて、

 

人気も全くないし、

行けども行けども山を脱出できない。

 

参ったなと焦り始めた頃、

峠を下る歩行者を発見した。

 

こんな山奥でも住んでる人は

いるんだな~と思いながら、

 

徐行して近づいてみた。

 

それは、

ベビーカーを押した若い女性だった。

 

きっと赤ちゃんが夜泣きでもした為に、

こんな時間に散歩しているんだろう。

 

大変だな~と、

のん気に考えて通り過ぎようとした。

 

しかし、すれ違いざまに、

アレ!?と思った。

 

・・・何かこの女、変だな。

 

髪はぼさぼさで、

服も泥で汚れている。

 

手足は擦りむいたのか、

あちこちが血で滲んでいる。

 

何よりこの女、

裸足で歩いている。

 

もしかしたら何か事故とか事件に

巻き込まれた可能性があると思い、

 

慌てて車を止めて降り、

女性に声をかけた。

 

「あの・・・大丈夫ですか?」

 

しかし、

 

振り向いた彼女を見て、

僕はゾッとした。

 

この女に声をかけてしまった事を、

のちに後悔する事になった。

 

ベビーカーに乗せた赤ちゃんは、

なんと死んでいるではないか。

 

腐った肉の臭い・・・

 

目玉の部分がぽっかりと

空洞になっている・・・

 

素人目に見ても、

明らかに死んでいた。

 

この女は赤ん坊の死体を

押して歩いている・・・

 

「うわっ!!」

 

僕はあまりにビックリして、

仰け反りひっくり返りそうになった。

 

だが、よろめく僕の手を、

 

彼女がしっかりと掴んだ為に、

転ばずに済んだ・・・

 

が、その後もの凄い腕力で

グイと引っ張り上げられて、

 

彼女と至近距離で目が合った。

 

目の焦点がおかしい・・・

いわゆるイっちゃっている状態・・・

 

女は僕に顔を近付けて、

突然叫び出した。

 

「私の赤ちゃん!赤ちゃん!

赤ちゃん!赤ちゃん!・・・」

 

かなりパニックになった僕は、

 

女を突き飛ばして車にダッシュで戻り、

その場から逃げ出した。

 

と、まあここまではよくある話だが、

さらに続きがある。

 

何とか山のふもとの町まで

たどり着いた僕は、

 

一睡も出来ず朝になると同時に、

近くの交番へ駆け込んだ。

 

「死体の赤ちゃんを連れた

女が歩いています」

 

・・・なんて話、

信用してもらえないんじゃないか?

 

とも考えたが、

 

僕はありのまま起こった事を

お巡りさんに話した。

 

年配のお巡りさんはニコニコしながら

黙って僕の話を聞いていたが、

 

詳しい話をしているうちに

真剣な顔つきになり、

 

最後には真っ青な顔色になった。

 

しばらくの沈黙の後、

 

お巡りさんは他言無用との約束で、

真実を話してくれた。

 

その事件の内容を以下、

お巡りさんの話。

 

先月、二週間程の長雨が続いて、

久しぶりに晴れ間が見えた日の事。

 

その峠は豪雨が続くと、

危険防止の為に通行止めになるらしい。

 

たまたま通りかかった地元の人が、

 

ガードレールがなぎ倒されているのに

気付いて110番通報をした。

 

間もなく警察官が到着。

 

約100メートル下の崖下を捜索すると、

 

やはり転落したであろう、

大破した乗用車を発見。

 

だが多少の血痕は確認されたが、

乗員の姿は何処にも見当たらなかった。

 

この年配のお巡りさんも、

もちろん現場に居合わせて、

 

すぐに乗員の捜索が始まった。

 

車のナンバーと持ち物から、

 

事故に遭ったのは近くに住む

若い女性らしいとすぐに分かった。

 

捜索は続き、

 

夕方に他の捜査員が

赤ちゃんの死体を発見。

 

車が転落した際、

車外に放り出され即死したらしい。

 

しかし、

この遺体が奇妙だった。

 

首が一度切断した後に、

 

無理矢理にホチキスで縫合した

痕が見られる。

 

年配のお巡りさんは怒鳴った。

 

「母親は生きてるかもしれん!

急いで探せ!」と。

 

どうやら気の動転した母親が、

 

息子の死体を何とか生き返らそうと

無理矢理に生首と体をくっ付けた・・・

 

そんな感じだったそうだ。

 

そして翌日、

母親の遺体も発見された。

 

必死の形相で助けを求めて

崖を這い上がる途中で、

 

息絶えていたそうだ。

 

「え・・・?」

 

お巡りさんの話を聞いて、

僕は震えが止まらなくなった。

 

「じゃあ・・・

 

昨日見たベビーカーを押す女は

幽霊なのか!?」

 

お巡りさんは幽霊なんて信じないそうだ。

 

でも母親の遺体を最初に発見したのは、

この年配のお巡りさんとの事。

 

あまりの酷い遺体にショックを受けたのか、

精神的に不安定で、

 

「夜道で女の声とベビーカーをカラカラ

押しているような音を聞いたり、

 

部屋で寝ていると

女が窓から覗いていたりと、

 

すっかり参ってしまったよ」

 

苦笑いしながら、

お巡りさんは語ってくれた。

 

あれからしばらくの月日が流れ、

 

きっとあのお巡りさんは

元気にしている事でしょう。

 

なぜなら、あの女はどうやら今、

僕に憑いて来ているから・・・

 

押し入れの中から一晩中睨まれていたり、

赤ちゃんの泣き声が聞こえてきたり・・・

 

なぜ?

 

あの時に助けを求めてきた女を

置いて逃げたから?

 

それとも・・・

 

(終)

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