友達は怖くて先に帰ったはずが
だいぶ昔のことだけど、
俺は友達と地元の神社の祭りに行った。
その頃の俺は中学生で、
それなりに無茶もやってしまうような
好奇心旺盛な少年だった。
祭りの夜に俺は友達を誘って、
神社のさらに奥の方の
暗い道に行こうと言った。
その暗い道というのは、
昔からよくない噂が絶えないような、
いわば心霊スポットのような場所だった。
もちろん友達もそのことを知っていて、
「嫌だよ、俺は・・・」
なんて言っていた。
「バカだなあ。
男なら行ってみなきゃいけないんだよ!」
そう俺は説得して、
嫌がる友達を無理に連れて、
その道に入った。
暗い道は雑木林になっていて、
本当に真っ暗で何も見えない。
気温は夏なのにやけに低いし、
生き物の声さえしない。
なにも知らない人が来たとしても、
ここは嫌な場所だと思うような感じだった。
「なぁ、もう帰らない?」
怖くなったのか、
友達はそう言った。
けれども、
俺は一度行くと言った以上、
全て見て回るまでは帰りたくなかった。
「嫌だよ。まだ見るんだよ!」
「俺・・・もう怖いよ。
もう帰っていいか?」
「ダメだよ!」
俺はそう言ったけれど、
「もうダメだ。帰るわ」
友達はそう言い残し、
走ってどこかに行ってしまった。
どうしようもない俗物だと俺は思いながら、
しばらく雑木林の中を探索し続けた。
※俗物(ぞくぶつ)
つまらない人。
しばらくすると暗がりの中から、
どこからか分からなかったけれど、
友達の情けない声が聞こえてきた。
「なぁなぁ、
こういう怖い所に冗談半分で入ると、
出るって言うじゃん。
やめとけよ」
「はぁ?
お前、帰り道すら怖いのか?
情けないなぁ。
出るわけないだろ」
それでも奴はしつこく続けた。
「いや、出るらしいよ」
まだそんな寝ぼけたことを言ってるのかと、
俺は苛立って無視をした。
無視をしてしばらく歩いているうちに、
ある違和感に気がついた。
・・・ん?
さっきの・・男の声だったけれど、
友達の声じゃねぇなぁ・・・
その時、
俺は急に背筋が寒くなって、
怖くなって・・・
そんな時にまた声が聞こえた。
「俺がもう出てるじゃねぇか」
(終)