某大学に伝わる学生寮の女霊の噂
都内にある大学の寮生だった時の話。
うちの大学は古く、
開校されてから残っている建物も
いくつかあって、
その中のA棟には『螺旋階段』がある。
階段は地下まで続いているが、
立ち入り禁止になっていた。
実際、異常なくらいの錠で繋がれており、
なんともいえない雰囲気を
常にかもし出していた。
○○○号室では必ずあの女に会う・・・
どこの大学にもあると思うのだが、
学生運動の頃の伝説やら怪談話が、
やはりうちの大学にもあった。
『A棟の地下を入ると、
迷路になっているらしいよ』
その噂では、
迷路には学長しか入れないらしい。
その噂は昔からあり、
面白がって無理矢理に迷路へ入った
学生は戻って来なかった・・・と。
この話を聞いたのが寮生の先輩で、
本当か定かではないが、
霊感があると豪語していた。
その先輩は夜に学校から寮へ帰る時、
地下から多数の呻き声を聞いたのだそうだ。
それと同時に、
貞子にそっくりな女にも
追いかけられたという。
寮の敷地に入った途端、
その呻き声は止んだらしく、
先輩は大学の怪談をもうひとつ、
私に聞かせてくれた。
その怪談とは、
貞子にそっくりな女の霊の話だった。
寮は男子寮と女子寮の建物がくっ付いていて、
真ん中の2階部分が食堂になっており、
いつも適当に理由をつくっては、
飲み会を毎日のように開催していた。
「男子寮の最上階にある501号室。
あそこの部屋のドアだけが、
鉄で出来ているのを知ってるか?」
私は女子寮で何も知らずに過ごしていた。
私の部屋はもちろん、
女子寮でドアが鉄で出来ている部屋などなく、
男子寮にも遊びに行っていたが、
501号室に入った事はなかった。
先輩は話を続けた。
「501号室に住む事になった奴は、
必ずあの女に会うんだ。
夜寝ていると、
覆い被さってくるらしいぞ」
なんで鉄の扉なの?と訊くと、
「学生運動があった頃、
そこはリンチ部屋だったらしいんだ。
だから頑丈なドアにしていたんだよ」
先輩は501号室の住民には
運良くならなかったらしく、
それでも寮で霊をみる事は、
日常茶飯事だったらしい。
私が体験したのは忘れもしない、
2004年7月7日。
寮の食堂で七夕パーティーと称して、
また飲み会が行われた日の事。
食堂には電気は点けられておらず、
ロウソクの灯りと食堂にある自販機だけが、
広い室内をぼんやり明るくしていた。
何故かその日に限って、
皆が怖い話ばかりをしていた。
丸く円になった3つほどのグループが、
気がつくと完成していた。
私はそのグループのうちの一つに入り、
ちょうど先輩に聞いた寮に出る女の話を
していた時だった。
食堂には窓が2つ、
自販機を挟んで付いていた。
私は話をしている最中、
どうしても右側の窓が気になって
しょうがなかった。
そして、見てしまった。
窓の外側にまるで動く歩道があって、
それに乗っている人らしきものを・・・
横向きで髪は黒くウエーブしていて、
自販機の明かりによって、
髪の艶までもがくっきりと分かった。
顔は髪で隠れていたが、
白い洋服らしきものを着ていた。
あまりの一瞬の出来事に、
「あ・・・」としか声が出なかった。
その直後に激しい吐き気に襲われ、
飲み会を途中で抜けました。
それ以来、寮を出るまで間、
鏡を見ると背後に『寮の女』が
こちらを伺うのをよく見ました。
これは私の考えた結論ですが、
彼女は学生運動の時に
501号室でレイプされた後、
それを苦に自殺したのではないかと思います。
ちなみにですが、
寮内では怖い話はタブーでした。
(終)