とあるキャンプ地で聞いた怖い噂 1/2

カヌー

 

T県を流れるK川の周辺は、

 

毎年夏になるとバーベキューやキャンプを

楽しむ家族連れや若者たちで溢れ、

 

まるで大きな街中にいるようなほどの

大賑わいとなる。

 

某大学のアウトドア系サークルも、

夏のキャンプ合宿にこの地を選び、

 

2日前から生活をしていた。

 

食事担当のAさんは水を汲みに行った時、

 

隣のバンガローにいるグループから、

ある噂を聞いた。

 

2、3年前から深夜になると時々、

 

誰もいないはずの川に、

一艘のカヌーが音も無く漕ぎ出す、

 

というのだ。

 

しかも、

そのカヌーには誰も乗っていないという。

 

今回の合宿メニューには、

カヌーでの川下りも含まれている。

 

この手の話は、

夜の宴会の恰好のネタだった。

 

Aさんも早速、その日の夜の宴会時に、

みんなにこの話をした。

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悲惨な事故から生まれた怖い噂・・・

「その誰も乗ってないカヌーは、

 

音も立てずに下流に向かって

のろのろと進んで行くらしいよ・・・」

 

「なんだか不気味だなあ」

 

みんなビールを飲んだためか、

顔がやや赤らんでいる。

 

昼間の暑さがまだ残る中、

川の水が岩に当たって跳ねる音や、

 

どこかで花火を楽しんでいる

ざわめきが聞こえてくる。

 

明日はいよいよ、

 

みんなで交替しながら

カヌーで川を下る日だ。

 

そして次の日。

 

川下りは予定通り始まった。

 

Aさんはカヌーから降り、

 

次の順番の人にヘルメットや

ライフジャケットを手渡した。

 

『なかなかいいコースに当たったな。

結構スリリングな早瀬もあったし。

 

ま、10回くらいは沈(じん)するぐらいの

ところじゃないと楽しめないよな』

 

濡れたTシャツを脱ぎ、

 

仲間が渡してくれたタオルで

体を拭きながらAさんは思った。

 

『沈(じん)』というのは、

 

カヌーがぐるりと上下逆さに

なってしまうことである。

 

カヌーの場合、ボート型のものと違い、

転覆しても沈んでしまうことはない。

 

仮に、こういう状態になってしまった場合は、

漕ぎ手は水中で船体から抜け出す。

 

上級者だとパドルを上手く使い、

 

抜け出さずにカヌーを元の姿勢に

戻すこともできる。

 

下流に下っていく仲間を見送っていると、

 

ふと川岸でキャンプ地の管理人が、

何かにお花を供えているのが見えた。

 

それが妙に気になって、

Aさんは声をかけた。

 

「あの・・・昨日カヌーの変な話を

聞いたんですけど・・・

 

噂って本当なんですか?」

 

「噂って?

・・・ああ、そうか。

 

いや、夜のカヌーの話なら、

ただの噂でしょう。

 

私は見たこともありません」

 

「でも、何かあってのことじゃ・・・

それに、その花は?」

 

Aさんの言葉に、

 

まだ若そうな管理人は、

たった今供えた花に目をやると、

 

下流の方を見つめるように顔を上げ、

つらそうな表情でポツリと言った。

 

「・・・いや、

これは私の友人のためのものなんです」

 

そして、

5年前の事故の話を始めたのだった。

 

当時、その川の一帯は、

 

夏休みに入るまでの期間は

禁猟区で釣り人もおらず、

 

カヌーの練習場専門となっていた。

 

その時も、

東京のある大学が合宿で来ていた。

 

それは雨が多い夏で、

 

一週間も降り続いた雨が、

ちょうどあがった日のことである。

 

雨で思うような練習ができない

憂さを晴らすように、

 

大学の部員たちは練習に没頭していた。

 

のんびりとした川下りではなく、

 

あえて荒い瀬を含む、

1kmほどのコースを選んでいた。

 

スタート地点は、

本流がU字型にゆったりと蛇行する。

 

そのあいだを直線的に繋ぐ、

50mほどの白く泡立つ急流があった。

 

かなりの瀬であったのだが、

 

部員たちは巧みなパドルさばきで

次々とそこを下っていく。

 

そして最後に、

一艘のカヌーが流れに漕ぎ出した。

 

かなりのスピードで岩を避け、

 

滝のように落ち込む流れも、

上手くかわしながら進んでいく。

 

と、その時、「キャーッ!」という、

数人の女性の叫び声があがった。

 

そのカヌーがひっくり返ったのだ。

 

しかし、それは悲鳴ではなく、

笑い声も混じった余裕のある声だった。

 

(続く)とあるキャンプ地で聞いた怖い噂 2/2

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