復讐に至るまでの経緯と真実 1/2

ナイフを持つ

 

私が彼と出会ったのは、

小学三年生に上がった時だった。

 

あやとりが上手く、

折り紙も上手で、

 

歌も音楽教師を惚れ惚れさせるような、

そんな少年だった。

 

彼は音楽が好きだった。

 

ただ、首から下に麻痺を患っていて、

身体を自由に動かせなかった。

 

楽器は口笛しか出来なかった。

 

でもその口笛は切ない音色で、

 

楽器を弾きたくても自在に弾けない

哀愁を漂わせていた。

 

私が彼について真っ先に思い出すのは、

美化されたこうした思い出だ。

 

これから話す内容は語るべきではないけれど、

胸に閉まっておくには重過ぎるので・・・

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彼の凄惨な学校生活とは・・・

彼は哀れな人だった。

 

彼はその不遇な身体のハンデを

クラスメートに嘲笑われ、

 

活発に活動出来ない身体のため、

男子同士との友好も深められなかった。

 

喧嘩をしても、

真っ向からぶつかり合えないので、

 

怪我をする前に自分が正しくとも謝る、

という事ばかり学ばざるを得なかった。

 

だからだろうか、

彼は気弱になっていってしまった。

 

小学五年生の頃、

担任が彼をイジメ始めた。

 

担任は娘の離婚で気が立っていて、

彼を事あるごとに殴る。

 

時に首を絞めたり、

 

張り倒した拍子に頭をぶつけて

出血するなんていうこともあった。

 

担任による彼へのイジメが、

クラスメート達の暴力にまで波及した。

 

私は彼が暴力を振るわれた夜には、

母に泣きついた。

 

一年間もこんな生活を続けさせられた彼は、

とうとう狂ってしまった。

 

彼に向けられた悪意は、

彼の中で蓄積していたのだろう。

 

小学生六年生の時、

彼は復讐を始める。

 

まず、自分をいじめていたクラスメート達に

意図的に近づき、

 

ゲームを貸してくれたら一日千円払う、

と言い出した。

 

私は偶然それを立ち聞きして、

彼はお金で関心を買おうとしたんだと思った。

 

それでイジメが無くなるのなら、

それでも良いと思った。

 

でも、母には相談した。

 

すると母は怖い顔をして、

決してその話は誰にもしてはダメと言った。

 

たぶん母には、

 

その時には私の大好きだった彼は

もういなくて、

 

悪意の塊で人間を信じずに憎む怪物に

なったことを察知していたのだろう。

 

事実、彼は怪物だった。

 

イジメっ子たちは小学生でありながら

学友を恐喝した事を公にされ、

 

立場を失った。

 

彼のイジメられっ子という立場は、

 

そのあまりに常軌を逸した事態に、

消えて無くなる。

 

哀れな被害者という立場になった。

 

彼へのイジメは止んだ。

 

彼は言った。

 

「あいつら嘘を言ってるんだ。

 

ゲーム一本借りるのに、

千円なんて払えないよ。

 

それに千円払うなんて言ってたら、

一ヶ月以上も借りたりしないよ。

 

あいつら僕を殴って言ったんだ。

 

四万円持って来なかったら、

もっと酷いぞって」

 

彼の”嘘”には真実味があった。

 

なぜなら、

彼は勉強は良く出来たから。

 

賢い子であるというのは、

学校の認識だった。

 

そうして胸をはだける彼の腹部や脇腹には、

 

青アザがいくつもあった事が

決定的な証拠となった。

 

それは担任を含め、

 

彼をつい先日までいじめていた者たちが

付けたものだった。

 

だからこそ悪魔の論理は、

 

大人も子供も真実を知っている私と

私の母以外は信じる事となった。

 

でも、もう遅すぎた。

 

加害者はやってはいけない事をした。

 

私が彼に恋したのは、

 

地面を這う蟻(アリ)ですらも、

踏んでは可哀相と下を見て歩く、

 

そういう純粋な優しさが、

 

クラスどころか学年に一人くらいしか

いなかったところだ。

 

でも彼はそれ以後、

下を見て歩かなくなった。

 

彼は蟻を何匹踏み殺したろう。

 

私は真実を語るべきではないかと、

母に相談した。

 

しかし、

決して喋ってはダメだと母は言った。

 

今は私も理解出来る。

 

一度壊された人間の心は、

もう元には戻らない。

 

あれほど優しかった彼が、

こうならざるを得なかったからには、

 

彼には復讐を遂げる権利はある。

 

ただ、母の考えは、

たぶん私とは違ったのだろう。

 

その後、そのイジメっ子たちは

小学校の頃の悪行を理由に、

 

エスカレーター式の母校を

相次いで退学になった。

 

それは彼の責任ではないと思っている。

 

なぜなら、

 

掘り返される理由は他でもない、

本人が作り出していたし、

 

(正確にはそうとも言い切れないが)

 

それに彼の嘘は、

 

彼が心身に受けた傷の万分の一にもならないと、

私は今でも思っている。

 

けれども、

 

最後の一人が高校一年生の頃、

煙草の所持一回で退学となった時。

 

(他は、一度目は有限停学。

二度目は無期停学(復学あり)。

 

そして三度目で退学)

 

退学処分を言い渡されるだけのために、

親と共に学校に来ていた様子を、

 

遠巻きに観察していた彼の表情は忘れない。

 

歯をむき出しにし、

目を爛々と輝かせ、

 

(あざけ)りの笑みはまさしく、

悪魔そのものだった。

 

ここまで書くと、

私の事をストーカーだと思うだろう。

 

そう、私はストーカー。

 

思いを告げようと思った相手が殺され、

中身が別のバケモノになった。

 

それでも元に戻らないかと、

初恋をその時までずっと引きずっていた。

 

でもあの表情を見た時、

それは初めから無理なんだと悟った。

 

一週間学校を休んで、

毎日泣き腫らした。

 

母は小学生の頃のように、

私を慰めてくれた。

 

彼は役目を終えたというように。

 

高校二年生の頃から、

 

成績を維持する努力を放棄し、

大学への進学は諦めた。

 

(続く)復讐に至るまでの経緯と真実 2/2

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