越してきて間もない女性が警察を呼んだ理由
私がまだ5歳だった頃の話です。
当時の家には風呂が無く、
よく母親と銭湯へ行っていました。
ある日の銭湯の帰り道での事です。
公営住宅が立ち並んでいる場所を通りかかると、
とある家の玄関先に警察官が二人居て、
女性が何かを大声で捲くし立てていたのです。
なんだろう?と訝しんだものの、
警察が居るのだから大丈夫でしょう、
と私たちは帰宅しました。
そして次の日。
昨日騒いでいたあの家の隣の住人が
私の母親の知り合いらしく、
詳しく話を聞いてきたのでした。
私たちがいつも行っていた銭湯に・・・
その話によると、
昨日の女性はその住宅に越して来て
まだ一週間足らずだったのですが、
引っ越して3日目あたりから、
寝室にしていた和室で
変な事が起こり始めたそうです。
そこの新しい住人となった女性は、
夜中に人の気配で目を覚ました。
なんだか子供が騒いでいるような気配だった。
キャッキャという子供の笑い声がする。
それと同時に、
畳をミシミシ踏む様子がハッキリと分かった。
部屋には霧のようなものが漂い、
その中を3人の子供が
はしゃぎ回っているんだそうです。
さらには母親とおぼしき女性の声で、
「ごめんね・・・」
「ごめんね・・・」
と繰り返しボソボソ言っている。
声のする方を目を凝らしてみると、
部屋の隅で女性が正座をしながら
ひたすら頭を下げている。
その女性がハッとしたように顔を上げ、
こちらを向いたそうです。
そのギラギラした目と視線が合った瞬間、
住人の女性は気を失ったのだそうです。
次の日に「酷い悪夢だった・・・」と、
半ば思い込んだのだそうです。
しかし・・・
それは次の日にも、
さらにはその次の日にも現われた。
まだ深夜でもない時間に、
部屋が妙に霧がかかったように霞始めた。
住人の女性は半ば半狂乱になって、
警察を呼んだのでした。
この騒動について、
後日に分かった事があります。
詳しい経緯は知らされませんでしたが、
その住宅の前の住人が逮捕されたのでした。
そして容疑者も立会いの元、
寝室の床下が掘り返されたそうです。
案の定、発見されたのでした。
合計4体の遺体。
全てバラバラだったそうです。
そして何より私が怖かったのは、
容疑者は「家族は実家に帰した」と触れ回り、
自分は住み込みで働いていたのです。
私たちがいつも行っていたあの銭湯に・・・
(終)