夫の窮地を助ける妻の勘
友人の話。
彼は来週にせまった山登りのために自宅で準備をしていた。
妻は毎度の彼の行楽に少々呆れていたようにみえたが、一緒に荷造りを手伝ってくれたそうだ。
登山二日目、彼は水にあたったのか、ひどい下痢に見舞われた。
脱水症状になり疲労困憊。
救急セットの中に何か使えるものはないか漁っていると、入れた覚えのない整腸剤が入っている。
服用すると少し楽になり、歩き出すことが出来た。
家に帰って妻にその事を言うと、自分が入れたと言う。
「なんとなく必要になる気がしたの」
彼の妻は度々その妙な勘の冴えを発揮し、家に居ながら彼の窮地を何度も助けているそうだ。
他にもこんな話がある。
いつものように山登りの準備を万端に整えた夜の事。
彼が地図を眺めて明日のルートをおさらいしていると、玄関で物音がした。
そっとドアを開けて覗くと、寝ていたはずの妻がごそごそと何かしている。
彼「なにしてるの?」
妻「うん・・・なんとなく。入れといた方がいいかなって思って」
寝ぼけ眼の妻が、ザックに包帯やらガーゼやらを詰めていた。
一体いくつ入れたのか、ザックはボコボコに変形し膨れ上がっている。
(これが必要な事態って一体どんな状況なんだ?)
ゾッとした彼は、その登山を取り止めたそうだ。
(終)