僕は何歳まで生きられますか?
中学生の時、突然コックリさんが流行りだした。
小学生時代に散々遊んで「これは嘘だ」と思っていた俺だが、ある条件で作成した文字表を使うと、恐ろしくなるほどピタリと当たるというのだ。
その条件は聞かなかったものの、吉田という男がカバンの中から取り出した文字表には異様な雰囲気が漂っていた。
特に、鳥居のマークが赤黒く、血を混ぜたような嫌な色だ。
コックリさんが示した文字列
コックリさんの細かいルールは忘れてしまったが、複数人でコイン(10円玉など)を抑え、動き出した後は決して指を離してはならないというようなルールだったと思う。
それまでに見たコックリさんはコインの動きが曖昧だったし、抑えられた指もどこか不自然で、誰かが無理矢理に動かしているようなインチキ臭いものだった。
ところが、吉田の持ってきた表と特別なコイン(お金ではない)は、迷いなく素早く動き、しっかり抑えていないと指が離れてしまうほど力強く動くのだ。
たわいもない質問が続き、素早く回答が得られる。
そうしている内に、メンバーの一人だった山下が愚かな質問をしてしまった。
「僕は何歳まで生きられますか?」
『まもなくつきる』
その回答を見ても、一同は意味がすぐに理解出来なかった。
数字で示されると思っていたので、文字列が並ぶとは思わなかったのだ。
「『まもなくつきる』ってなんだろう?」
「もうすぐ終わるって事じゃない?」
「間もなく命が尽きるってこと?」
「おい!なんて愚かな質問をしたんだ!」
その意味を知って、コインを抑えていたメンバーが恐怖のあまり反射的に全員指を離してしまった。
誰も触れていないコインが、一瞬の沈黙の後に突然勝手に動き出し、迷いなく文字を綴っていく。
『にげることかなわぬまもなくつきる』
その後、山下は死ぬことはなかった。
しかし、「影に引きずり込まれる!」と不可解なことを突然口走るようになり、見えない何かに酷く怯えるようになった。
結局その症状が日に日に悪化し、一週間後には登校出来なくなってしまった。
山下と親しかった友人の話によると、一ヶ月後には自分のこともほとんど分からなくなって遠くの病院へ入院したそうだ。
その後の彼の消息を知るものはいない。
(終)