気占いのフーチを真似てみた結果
この話は俺が中学生の時の事だ。
ネット用語に”厨二病”という言葉があるけれど、まさにそれだったと思う。
後から思い出してみれば、どうしてこんなことをしたのか自分でも分からない。
きっと何かに取り憑かれていたのだろう。
霊的なものに興味を持ったのだが・・・
さて本題だ。
あなたは『フーチ』というのを知っているだろうか?
簡単に説明すると、フーチとは「気」の測定方法の一つで、振り子やL字型の棒を使って、地下の水脈などを探し当てる技術。
他にも、ダウジングなどが挙げられる。
振り子に質問を投げかけると、霊的作用や波動パワーなんかで振れ方が変わり、振り子が答えてくれるというものだ。
俺は当時、霊感というものになぜか興味があって、気や魔法なんかも使えると思っていた。
そういったわけで、これを作って遊んでいた。
俺が作ったフーチは実際の物とは多少違ったけれど、これがなかなかの的中率だった。
調子に乗った当時の俺は、何を考えたのか恐ろしいことを始めた。
「俺は○○高校に合格する?」とか、「○○は俺のことが好き?」とか、半ばこっくりさんのようなことを始め出した。
実に愚かな行為だ。
さらに何を思ったか、もっと変なことを訊き始める。
「俺には守護霊が憑いているの?」とか、「俺にも霊感があるの?」など、霊的なことを訊き始めた。
別にフーチにこんな質問をしてはいけないという決まりはないけれど、冷静に考えたらやめた方がいいのは明らかだ。
ちなみに、振り子の答えはイエス。
霊感に興味のあった俺は、その答えに何やら嬉しくなっていた。
だが、ここで問題が起きる。
誰も居ないはずの台所から音がする。
プツ・・・プツ・・・と、ビニール袋に穴を開けるような音だ。
もちろん台所にビニール袋はある。
買い置きの玉ねぎをネズミか何かが漁っているのだと思い、俺は台所に行って明かりを点けた。
しかし、音は止まらず。
耳障りなので、ビニール袋を蹴飛ばしてネズミを追い払おうとした時だった。
何かが変だ。
ビニール袋からは鳴っていない。
鳴っているのは”空間”だった。
ビニール袋の上の辺りの空間が、プツ・・・と鳴っている。
俺はここで事の重大さに気付く。
ラップ音か?!
初めて聞くラップ音に驚き、大事をやらかしたことに気づくが、俺はもっと大事をやらかす。
「臨・兵・闘・者・皆・陣・裂・在・前!」
俺は、あろうことか霊にケンカを売った。
音が鳴っている空間に向かって”九字”を切ったのだ。
もちろんその時は良いと思ってやった。
九字には魔除けの力があると聞いたからだ。
しかし、俺が九字を切ったところで何が起こるわけでもなく、ラップ音は続き、俺は怖くなったので部屋に戻った。
部屋に戻っても、台所からの音は途絶えなかった。
時刻は深夜3時を回っており、俺は布団を被ってすぐに寝ることにした。
それから一ヶ月の間は、俺自身が一週間も寝込んだり、親がいきなり原因不明の痛みで苦しみだして急遽病院に行ったり、自転車で転倒したりと、怪我や病気が絶えなかった。
さらには、食器がカタカタ鳴ったり、天井裏を子供が走る音など、恐ろしい現象が度々あった。
俺は、死後の世界も霊も無いと思いたい。
人間は何も無いところから細胞として生まれ、最後はカルシウムやリンの塊となって終わる。
ただそれだけのことだと思う。
でもこれに限らず、時々こういう不思議な霊的体験がある。
正直、怖い。
(終)