いつも忘れ物をする男の子
友人が小学生の頃、クラスにいつも忘れ物をする男の子がいたそうだ。
見兼ねた先生は『忘れ物ノート』というものを作り、男の子が忘れ物をする度にそのノートに記録を書かせた。
男の子は先生に殴り飛ばされ、先生はいつも言っていた。
「いいか、先生はお前が憎くて殴っているんじゃない。お前が少しでもちゃんとした人間になるように、お前のためを思って殴っているんだ」
しかし、男の子は忘れ物などしていなかった。
男の子の最後の忘れ物
忘れたのではなく、ちゃんと前日に持って来ていたのに無くなっているのだ。
ロッカーやランドセル、机の中を探しても無い。
そんなある日、男の子は近くの踏み切りで自殺してしまった。
バラバラになった男の子の遺体の中に、なぜか頭だけが無かった。
警察や処理班の人達が周辺を探し回ったが、どこを探しても見つからない。
頭が発見されないまま男の子の自殺は近所に知れ渡り、数日後に先生の耳にも入った。
そして先生は呟いた。
「何も自殺までしなくても良いのに・・・」
男の子の物を隠していたのは先生だった。
嫌な事や気に入らない事があると、その憂さ晴らしのために忘れ物を理由に男の子を殴っていたのだ。
男の子から盗んだリコーダーやコンパスなどを片付けながら、次の標的は誰にしようかと考えていると、ふと背後で人の気配がした。
「だ、誰だ!?」
秘密を知られれば、憂さ晴らしが出来なくなる。
先生は慌てて振り返り、そしてもう一度手元を見て驚愕した。
そこには、男の子の頭があったのだ。
頭を放り投げ、逃げ出そうと後ろを向いてまた叫び声をあげた。
先生の後ろには、首の無い男の子が忘れ物ノートを抱えて立っていた。
翌日、職員室で変死体となった先生と、あの忘れ物ノートが発見された。
警察が忘れ物ノートを開くと、そこには震えた字でこう書かれていたそうだ。
『わすれたもの:ぼくのあたま、せんせいのいのち』
(終)