願いが叶った時、私は大笑いした
「なんとか願いを叶えたい!」、そう強く思いました。
想い人は15歳年上の会社の上司で、とても仕事が出来る人です。
私は勇気を持って告白し、その後にその人と結婚しました。
しかし残念だったのは、彼は思った以上に小食だったことです。
食は基本です。
だからなんとか彼に食べてもらおうと、私は毎日お料理の研究を続けました。
彼女の恐ろしい計画
数年後、彼はあまり家に帰って来なくなりました。
仕事が忙しいとのことですが、どうやら外に女がいるようです。
それでも私はなんとか手料理を食べてもらおうと、毎日お弁当を作りました。
彼は私の手料理を気に入ってくれていたので、お弁当も残さず食べてくれました。
私はそれが嬉しかったのです。
少しでも食べてくれてるのなら、「今はそれで十分だ」と自分に言い聞かせました。
数年後、彼の身体に癌が見つかり、余命は半年と診断されました。
その時、彼は涙を流して私に謝りました。
「今まですまなかった。家庭を顧みず好き勝手に遊び回って、お前には苦労をかけた。息子をよろしく頼む。それだけが気がかりなんだ。信じてくれないかもしれないが、俺は、お前も息子も本当に愛しているんだ」
彼はそう言って、私の手を握りました。
そして半年後、彼は他界しました。
私は彼のやせ細った死に顔を見て、彼の最後の言葉を思い出して泣きました。
嬉しかったのです。
やっと願いが叶ったのですから。
やっと、殺すことが出来たのですから。
私が本当に愛した人は、私と同期の大人しい人でした。
その愛する人は自殺をしたのです。
この鬼にイジメ殺されたのです。
私は復讐するためだけに結婚し、毎日少しずつ食事に毒を盛っていました。
決してバレないように細心の注意を払って、身体が少しずつ壊れる合法的な献立のみを考えて食べさせたのです。
鬼が美味しそうに食べていた料理は、全て私の怨念。
それを最後まで知らなかったのが面白くて、私は大笑いしました。
家には息子が一人います。
家庭を顧みない鬼だったのが幸いでした。
息子は高校を辞め、部屋に閉じこもり、毎日私の運ぶ料理だけを食べる下等生物になっています。
そう育ててあげたのよ、鬼とそっくりな可愛い子鬼ちゃん。
それに、鬼の最後のお願いを叶えてあげないといけないわね。
「よろしく頼む、子供を愛している」
ええ、当然、よろしくしてあげるわ。
あの人の仇を討った今、今度は私の人生を狂わせた責任を取らせてやる。
ありがたいことに、鬼とそっくりなんですもの。
これから数年かけて父親と同じ料理を食べさせ続けてやる。
仕事も勉強もしなくていい。
お前は、ただ食べてりゃいいんだよ。
さっさと壊れてしまうがいい。
とっとと壊れて死んでしまうがいい。
ふふふふふふ。
ああ、おかしい。
今日はなんておかしい日でしょう。
こいつが済んだら親鬼にも同じように食べさせてやる。
ふふふふふふ。
(終)