べっ甲飴にすっかり魅了された私に迫った危険

私がまだ小さかった頃に体験した実話です。

ある夏のこと、近所の神社の縁日でたくさんの屋台が出ており、そこに『べっ甲飴』の屋台が出ていました。

飴は小さくて丸い物という認識しかなかった私は、色付きガラスの様なべっ甲飴と、むせ返るような飴の甘い匂いにワクワクしました。

一緒にいた両親は「綺麗ね」とは言うが、「虫歯になってしまう」、「こんな大きいのは食べ切れない」などの理由で買ってはくれませんでした。

しかし、べっ甲飴にすっかり魅了された私は、次の日から毎日屋台を一人で見に行っていました。

貰った袋に詰まっていたのは･･･

数日続いた縁日も最終日になり、その頃には顔馴染みになっていたべっ甲飴屋のおじさんが、最後に棒付きの小さいべっ甲飴を「食べ終わったら歯ぁ～磨けよ～」と言いながらくれました。

私は早速どこかに座って食べようと境内を見渡しながら歩き、他のおじさんにも「これもやるよ」と砕けたべっ甲飴が詰まった袋を貰いました。

境内の脇で貰った棒付きべっ甲飴を食べ始め、その途中でそろそろ帰ろうと、べっ甲飴屋さんの屋台の前を通り、（バイバイ、飴ありがとう）の意味で手を振った。

すると、べっ甲飴屋のおじさんが片付けをしながら「もう食ってるんか」と笑いながら話しかけてきたので、私は「まだこっちもある～」と砕けた飴が入っている袋を自慢げに見せました。

おじさんはじっとその袋を見ると、「こっちへよこせ」と手招きをしました。

なんと、袋の中は『割れたガラスの破片』でした。

もし砕けた飴の方から食べ始めていたら･･･。

この時の事を今でも、縁日に行ったり屋台関連の風景を見ると思い出します。

後日談

その後に警察が来て、縁日の中で異様な雰囲気になった事を強烈に覚えています。

べっ甲飴屋のおじさんと話し、迎えに来た母と一緒に警察の人に事情を聞かれました。

私は泣いてしまい、あまりまともに返答は出来ていなかったと思います。

大人になってから母にこの時の事を聞いたところ、他の屋台の人が「怪しい男が袋を持って立っていた」と証言したらしいです。

その男が捕まったかどうかは分かりません。

（終）