「次も助けてもらえると思うな!」
これは、『幽霊』と思われるものに家で遭遇した話。
昔のことになるが、家族で晩ご飯を食べていたら、勝手口から急に着物姿の物凄い顔をした婆さんが訪ねて来た。
しかも、5~6歳くらいの小さい男の子も一緒に。
その光景に家族みんなは戦慄して、婆さんが男の子の手を引いて家に上がって来ても誰も何も言えなかった。
その後、婆さんが黙ったまま奥の座敷の方に消えていってから、母が涙目で警察を呼ぼうと騒ぎ始めた。
なので、まずは俺と親父で様子を見てくることにした。
椅子を軍船の衝角のように構えて座敷に向かうと、そこには婆さんと男の子の姿はなかった。
その代わり、衣冠を身に着けた平安貴族のような人が怒った顔で座敷に座っていて、笏で座敷に祀ってある神棚を指しながら「次も助けてもらえると思うな!」と怒鳴ってスーっと消えてしまった。
※衣冠(いかん)
平安時代以降の貴族や官人の宮中での勤務服。
※笏(しゃく)
束帯(正装)の時、右手に持つ、細長い薄板。
神棚は亡くなった祖父母が設置したもので、二人がいなくなってからは誰も面倒見ずに埃まみれになっていた。
ひょっとしたら、あの平安貴族のような人は神様で、俺たちをあの婆さんから守ってくれたのかもしれない。
今では神棚を綺麗にして、毎日供物も捧げるようにしている。
そのおかげか、それ以降は幽霊のようなものが現れることはない。
(終)
神棚かぁ。
神棚はあるはあるけど掃除も何もしてなくて埃まみれ、
という家や会社はわりとあるよね。