深夜、部屋の丸窓から見た光景 2/2

たしかに付き合ってた頃も

結構不思議な子で、

 

金縛りや、

独り言は日常茶飯事で、

 

年中うなされたり、

酷いと叫んだりしてたのは

覚えていた。

 

ただそこまで酷いとは

思っていなかったので、

 

かなりショックを受けた。

 

その時は、日本に帰って様子だけでも

見に行くべきかと思ったが、

 

悲しいもので、

学校の単位的にも金銭的にも、

日本に帰ることは出来なかった。

 

それから半年して、

夏休みに一時帰国することがあったので、

 

そのついでに彼女の実家の

広島まで行ってみた。

 

(俺は東京なので、

交通費がかなりきつかった)

 

住所を頼りに実家を訪問した。

 

どうも様子がおかしいなと、

彼女の実家の前で

思ったことを覚えている。

 

と言うのも、

なんて説明したらいいか分からんが、

なんか色がくすんでた気がした。

 

インターホンを鳴らすと、

彼女の母親が出て来た。

 

俺を一目見ると「あなた、○○さん!」と、

ほぼ叫んでた。

 

いきなり叫ばれたのでびびったが、

やっぱりその時も変だと思った。

 

家に入れてもらい居間に通され、

彼女の容態を聞こうと思った時、

 

愕然とした。

 

仏壇に彼女の大きな写真が、

そして線香が焚かれていた。

 

俺はマジで混乱して、

どういうことか把握出来なかったから、

 

「どうしたんですか!」

 

と叫んだ。

 

叫んですぐさま思ったのは、

自殺したんだろう。

 

案の定、入院先から逃げ出し街まで出て、

とある雑居ビルから飛び降りたらしい。

 

その時のことは、正直、

俺も記憶が今でもあやふやだ。

 

ショックだったし、なにより、

やり直すつもりで

それなりの覚悟をしてたからだ。

 

理由を彼女の母親に尋ねるも、

病院に入院していたこともあり、

精神的なものだとしか聞かされなかった。

 

結局、日も限られていて、

墓参りをした次の日には東京に戻り、

 

その一週間後には、

また自分の留学先に戻った。

 

留学先の自分の屋根裏のアパートに戻ると

手紙が届いていた。

 

なんと彼女からだった。

 

正直、生まれてから一番

びびったかもしれない。

 

封筒を開けると、酷いものだった。

 

錯乱していた。

 

辛うじて内容は掴めたが、

本当に荒れた字だった。

 

わたしはしぬ。

あれからずっとおいまわされてる。

げんじつにもゆめにもずっと、

あのおとと、

あのふたりがついてくる。

 

読める範囲で理解出来た言葉は

それだけだった。

 

ただ、デッサンが同封されており、

なんてことは無い、

俺のアパートの丸窓だった。

 

俺はあまり泣かない方だが、

この時ばかりは泣いた。

 

15年ほど前にオヤジが死んだ時も泣いたが、

それ以上に泣いた。

 

それを機に、急遽帰国して

今に至るわけだが。

 

帰国する前に、他国へ留学した

画学生の国に遊びに行った。

 

相変わらず飄々としていたが、

起こったことをすべて話すと、

 

「黙っていたことがある」

 

と言って語り始めた。

 

なんでも、彼女が俺の家に

初めて来て以来、

 

ずっと変な親子に

付きまとわれていたと言うこと。

 

なんとなくは予想していたが、

当時は本当にそんなことがあるとは

思いもしなかった。

 

思えば、付き合った半年、

 

後にも先にも彼女はその一度しか、

家に泊まっていなかった。

 

俺にそれを黙っていたのは

彼女の思いやりらしく、

 

その画学生の友人も、

約束を守り続けていたらしい。

 

そしてそれを聞かされ後、

俺は留学を取りやめ、

完全帰国することを打ち明けた。

 

すると、「実はもう一つ

黙っていたことがある」と言い、

 

「俺も見たんだ、実は」

 

そう続けた。

 

「彼女の言っていた、母親と子供を見た」

 

そうも言った。

 

いきなり言われたもんだから

信じれなかったが、

 

「俺もそれ以来、ずっと

付きまとわれている。

 

それから、あのエスカレーターの

ブーンとか言う変な音も」

 

そう言うと、いきなり怖い顔して

俺にこう言った。

 

「日本に帰るまで、どんなことがあっても

あのエスカレーターに近寄るな」

 

帰国のための荷物を手っ取り早くまとめ、

飛行機のチケットを手配し、

逃げるようにして日本に帰ってくるわけだが、

 

帰る前に、彼女との思い出の場所やら

なんやらを一通り巡った。

 

その国での最後の夜に、

ちょうど2時過ぎ頃、

彼女が丸窓を覗いた頃、 

 

エスカレーターがブーンと鳴り始めた。

 

友人の忠告も無視して俺は覗いた。

 

しかもずっと、そのエスカレーターが

止まるまで見続けた。

 

なにもない。

 

なにもいない。

 

この話は、ここで終わる。

 

<以下、後日談>

 

俺は幸い、その親子に

付きまとわれずに日本に戻り、

 

普通に仕事をして暮らしている。

 

ただ、この話には、一つだけ今でも

俺を悩ませていることがある。

 

それは、実家に着くと俺宛に届いた、

画学生の友人からの一通の手紙である。

 

そこには、今から自殺すると言うこと、

探さなくて構わないということ、

 

そして・・・

 

俺が彼女と付き合っている間に、

彼女をレイプしたらしい。

 

そして、それ以来、

段々と彼女がおかしくなった、

 

と言うことが書かれていた。

 

それを読んだ時、

俺は彼女が俺宛に遺した手紙を

引っ張り出した。

 

最後のどうしても読めなかった一文を、

やっとその時読むことが出来た。

 

『こめんなさい、本当にごめんなさい』

 

(終)

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