リゾートバイト(本編)4/14

部屋に戻ってしばらくすると、

AとBが戻ってきた。

 

A「おい、大丈夫か?」

 

B「何があったんだ?

あそこに何かあったのか?」

 

答えられなかった。というか、

耳にあの音たちが残っていて、

思い出すのが怖かった。

 

すると、Aが慎重な面持ちで、

こう聞いてきた。

 

A「お前、上で何食ってたんだ?」

 

質問の意味がわからず聞き返した。

するとAは、とんでもないことを言い出した。

 

A「お前さ、上に着いて

すぐしゃがみこんだろ?

俺とBで何してんだろって

目を凝らしてたんだけど、

何かを必死に食ってたぞ。

というか、口に詰め込んでた」

 

B「うん・・。しかもさ、それ・・・」

 

AとBは揃って、俺の胸元を見つめる。

 

何かと思って自分の胸元を見ると、

大量の汚物がくっ付いていた。

 

そこから食物の腐ったような匂いが

ぷんぷんして、俺は一目散にトイレに駆け込み、

胃袋の中身を全部吐き出した。

 

何が起きているのか、わからなかった。

 

俺は上に行ってからの記憶はあるし、

あの恐怖の体験も鮮明に覚えている。

 

ただの一度もしゃがみ込んでいないし、

ましてや、あの腐った残飯を、

口に入れるはずがない。

 

それなのに、確かに俺の服には

腐った残飯がこびり付いていて、よく見れば

手にもソレを掴んだ形跡があった。

 

気が狂いそうになった。

俺を心配して見にきたAとB。

 

A「何があったのか話してくれないか?

ちょっとお前、尋常じゃない」

 

俺は恐怖に負けそうになりながらも、

一人で抱え込むよりはいくらかましだと思い、

さっき自分が階段の突き当たりで

体験したことを、ひとつひとつ話した。

 

AとBは、何度も頷きながら

真剣に話を聞いていた。

 

二人が見た俺の姿と、俺自身が体験した話が

完全に食い違っていても、

最後までちゃんと聞いてくれたんだ。

 

それだけで安心感に包まれて、

泣きそうになった。

 

少しホッとしていると、

足がヒリヒリすることに気づいた。

 

なんだ?と思って見てみると、

細かい切り傷が、足の裏や膝に大量にあった。

 

不思議に思って目を凝らすと、

なにやら細かいプラスチックの破片ようなものが

所々に付着していることに気づいた。

 

赤いものと、ちょっと黒みのかかった

白いものがあった。

 

俺がマジマジと見ていると、

Bは「何それ?」と言って、

その破片を手に取って眺めた。

 

途端、「ひっ」と言って、

それを床に投げ出した。

 

その動作につられて、

Aと俺も体がビクってなる。

 

A「なんなんだよ?」

 

B「それ、よく見てみろよ」

 

A「なんだよ?言えよ恐いから!」

 

B「つ、爪じゃないか?」

 

瞬間、三人とも完全に固まった。

 

AB俺「・・・」

 

俺はそのとき、

ものすごい恐怖のそばで、

何故か冷静に、

さっきまでの音を思い返していた。

 

ああ、あれ爪で引っ掻いてた音なんだ・・・

どうしてそう思ったか、わからない。

 

だけど、思い返してみれば、

繋がらないこともないんだ。

 

階段を上るときに鳴っていた

「パキパキ」っていう音も、

何かを踏みつけていた感触も、

床に大量に散らばった

爪のせいだったんじゃないか?って。

 

そしてその爪は、壁の向こうから

必死に引っ掻いている

何かのものなんじゃないか?って。

 

きっと、膝をついて残飯を食ったとき、

恐怖のせいで階段を無茶に駆け下りたとき、

床に散らばる爪の破片のせいで

ケガをしたんだろう。

 

でも、そんなことはもうどうでもいい。

 

確かなことは、ここにはもういられない

ってことだった。

 

俺は、AとBに言った。

「このまま働けるはずがない」

 

A「わかってる」

 

B「俺も、そう思ってた」

 

「明日、女将さんに言おう」

 

A「言って、行くのか?」

 

「仕方ないよ。

世話になったのは事実だし、

謝らなきゃいけないことだ」

 

B「でも、今回のことで、

女将さん怪しさナンバーワンだよ?

もしあそこに行ったって言ったら、

どんな顔するのか俺見たくない」

 

「バカ。言うはずないだろ。

普通に辞めるんだよ」

 

A「うん、そっちの方がいいな」

 

そんなこんなで、俺たちは

その晩のうちに荷物をまとめ、

男なのにむさくるしくて申し訳ないが、

あまりの恐怖のため、布団を2枚くっ付けて

そこに3人で無理やり寝た。

 

めざしのように寄り添って寝た。

誰一人、寝息を立てるやつはいなかったけど。

 

そうして明日を迎えることになるんだ。

 

次の日、誰もほとんど口をきかないまま

朝を迎えた。

 

(続く)リゾートバイト(本編)5/14へ

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