鏡 3/3

鏡

 

俺は覚醒しきれない頭で

状況を把握する。

 

熟考するまでもなく、

夢を見ていたらしい。

 

思わず腕時計を確認する。

 

12時過ぎ。

 

もちろん左手にはめている。

 

ひどい夢だった。

 

すべてはColoさんの予知夢だった

という設定らしい。

 

確かにColoさんは異常に勘が鋭く、

 

その勘の元になっているのは

エドガーケイシーのような予知夢だと、

 

師匠に聞いたことがある。

 

エドガーケイシー(wikipedia)

 

その話が原因で、

こんな変な夢を見たのか。

 

ばかばかしいではないか。

 

だって今のは、

Coloさんの見る夢ではなく、

 

この俺の夢だったのだから。

 

「うーん」

 

という声とともに、

Coloさんが頭をイヤイヤする。

 

みかっちさんが無理やり、

その頭を揺さぶりながら言った。

 

「起きろー。

鏡占いに行くんでしょ」

 

その言葉を聞いて、

俺は背筋に冷たいものが走った。

 

いや、待て。

 

俺が寝ている時に、

きっとそんな話になったのだろう。

 

それが浅い眠りに入っていた俺の、

夢の表層に現れたに過ぎない。

 

「あー、そうだっけ」

 

眠そうに頭をあげるColoさんを見て、

俺は思わず言った。

 

「いや、俺もう帰りますし」

 

みかっちさんは「えー」と言って

不満を口にしたが、

 

取り合わなかった。

 

Coloさんは瞼をこすりながら、

俺をじっと見ていた。

 

「なにか」

 

とドキドキしながら言うと、

 

「なんだっけ」

 

と首を捻っている。

 

「あ、そうだ」

 

そう言ってColoさんは、

みかっちさんに何か耳打ちをした。

 

するとみかっちさんは、

鼻で笑いながらPHSを取り出し、

 

ベランダに出ながら

どこかに掛け始めた。

 

1~2分の後、

 

みかっちさんはPHSに向かって何事か

喚きながらベランダから戻ってきて、

 

慌しくColoさんの部屋を

飛び出していった。

 

呆然とする俺の前で、

 

Coloさんが無表情のまま、

あくびをひとつした。

 

結局その日は家に直帰し、

何事もなく一日が終わった。

 

後日、

 

Coloさんの彼氏でもある

オカルト道の師匠のもとへ、

 

その出来事の話をしに行った。

 

気になってたまらなかったからだ。

 

一通り話を聞き終えると、

師匠は唸りながら、

 

「巻き込まれたな」

 

と言った。

 

以前、

 

師匠からColoさんの体質について

聞いてことがあったが、

 

その時、

 

「寝ているところを見せてやりたい。

怖いぞ」

 

というようなこと言った。

 

まさに、その『怖い』現象に

巻き込まれたのだと言う。

 

いわく、

Coloさんは浅い眠りに入った時に、

 

予知夢としかいいようがない

不思議な夢を見る。

 

その夢は、

目が覚めた時は覚えていない。

 

ただ、時々日常生活の中で、

それを『思い出す』のだそうだ。

 

それも、

 

まだ起こっていない未来を

思い出すのだ。

 

無理に思い出そうしても

思い出せない。

 

どういう基準で思い出せるのかも、

よくわからない。

 

しかも、

 

まれにノイズとでもいうべき

ハズレが存在する。

 

その原因もわからない。

 

師匠はColoさんと一緒に寝ている時、

 

そのColoさんの見る予知夢を、

同時体験してしまったことがあるという。

 

自分が予知夢の登場人物になって思考し、

行動し、

 

その体験が目覚めたあとも、

自分の意識にそのまま繋がっていた。

 

そして、

その内容をColoさんは覚えていない。

 

同じだった。

 

今回の俺の体験と。

 

『巻き込まれた』

 

とはそういうことなのだ。

 

師匠が見た夢のことは

詳しく教えてくれなかったが、

 

「口にしたくないほど恐ろしかった」

 

・・・そうだ。

 

「僕以外で、巻き込まれた人は

初めてかもしれない」

 

師匠は変なことに感心している。

 

「それにしても面白いな。

 

『困難の正体が映る鏡』

を見に行って、

 

いつのまにか自分自身が

鏡の中にいたっていうのか」

 

あれは不思議な感覚だった。

 

予知夢だかなんだか知らないが、

そんなことはありえないと思う。

 

あるいは、

 

たまに外れるという、

ノイズにあたる部分なのかも知れない。

 

「1.鏡の向こうの俺に危険な人影が迫っている 」

「2.こちら側にはその人影は存在しない」

「3.今思考している俺は鏡の中の人物である」

「4.鏡の向こうが本当の世界である」

 

師匠はボソボソとそう呟いた。

 

「つまり、

 

『いないはずの人影が、

鏡の中にだけ映っている』

 

という最初の恐怖は、

さっき挙げた君の4つの認識によって、

 

『いるはずの人影が、

鏡の中に映っていない』

 

と変換されたわけだ。

 

夢の中で自分が鏡の中にいるという自覚が、

一体、何を象徴しているのか、

 

フロイト先生なら何か面白い解釈を

してくれるかも知れないが。

 

ともあれ、

 

少なくともここには、

ある非常に興味深い暗示が含まれている」

 

師匠はニヤニヤしながら、

 

「こんな言葉を知っているか」

 

と言って続けた。

 

吸血鬼は鏡に映らない。

 

(終)

次の話・・・「海 1/2

原作者ウニさんのページ(pixiv)

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One Response to “鏡 3/3”

  1. にゃんころ より:

    最後の一文でゾワッとした

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