猫に故人の顔を見せると成仏できない
これは、3年前に祖母が亡くなった時の話。
病院から自宅に連れ帰り、家族みんなでしみじみ泣いていた。
ただ、『猫に故人の顔を見せると成仏できない』という地方の習わしがあり、祖母が可愛がっていた猫のミイちゃんには祖母を見せず、私は父に言われて外の物置に連れて行った。
もう一回だけ頼んでごらん
ミイちゃんは「会わせてよう・・・」と言っている感じで鳴いていたが、仕方なく物置へ。
しかし、物置の真ん前には軍服風の古着姿のお兄さんが立っていた。
どいてもらうために「すいません」と声をかけると、「もう一回だけ頼んでごらん」と、私が来た自宅を指差した。
私はとっさに「ダメなんです・・・決まりだから」と言ったが、お兄さんは「あと一回」と言うと、倉庫の中へ消えてしまった。
怖さで自宅に引き返した私は、「ミイちゃんにもお別れさせてあげたいよー!」と絶叫した。
すると父が、「・・・分かった。ミイもこっちに来んね」と、まさかの許可。
ミイちゃんは祖母にすり寄り、お別れをして、同じ部屋に一晩付き添った。
その後もミイちゃんを自由にしたまま葬儀を済ませた。
住職さん曰く、祖母はお盆には戻って来ているらしいので成仏は出来たようだ。
ちなみに、古着のお兄さんの話は誰にもしていない。
あとがき
世間では、『猫に故人の顔を見せると成仏できない』と言われる理由はいくつかあるようだ。
例えば、昔は土葬だった為、臭いを覚えて遺体を餌にしてしまうから、迷信を作って猫やその他の動物を近付けさせなかった、とか。
また、猫は故人の霊が見えることから、その猫と一緒に居ついて成仏できなくなってしまう、とか。
(終)