女はいざとなったらみんな同じ
大学時代、長野県にある
スキー場に行った時の話。
ちょっとした気まぐれで、ゲレンデではなく、
林道コースを使って下山していた時のことだ。
林道コースというのは、ゲレンデの周囲にある山道で、
緩斜面だが道幅が細く見通しが悪い。
その、まさに見通しの悪いカーブを抜けたところ、
女性のスキーが外れたのか、
カップルが道のど真ん中で突っ立っている。
避けようにもコースの谷側は崖だ。
おっとっとっと、と雪国生まれの俺は、
片足スキーで崖っぷちを抜ける。
そして、滑り去りながら
背後に向かって叫ぶ。
「こんなとこで突っ立ってんじゃねえよ!」
男の「すいません・・・」の声に被せて、
女の「なによ、あんた!喧嘩売ってんの!」の罵声。
あぁやだやだ、おれは大人になっても
絶対あんなクソ女だけは彼女にしない。
そう、固く決意した長野の曇り空であった。
時は経って、数年、社会人になった俺は、
東京(俺)と福岡(彼女)の遠距離恋愛をしていた。
彼女は美人の上におとなしく、
1日デートしてても「へえ」と「ふうん」と「うふふ」
くらいしか言わない子だった。
仕事に慣れてきたら彼女を東京に呼んで
結婚しよう、などと考えていた。
福岡でのデートは
彼女の車でドライブすることが多い。
その際、俺がナビをやることになるのだが、
乗り物に弱い俺は車中で地図など見ていた日には、
あっという間に酔う。
結果、いい加減なナビになり、
我々は道に迷うのである。
その時も、峠道で迷った。
「ここどこなのぉ」
「知らん。テキトーに走ってりゃあ大きな道に出るよ」
「ちょっと地図見せて」
「運転に専念しろよ、危ない」
などと会話しながらのろのろ走っていたのだが、
どうやら後方に単車の兄ちゃんがいたらしい。
道幅の狭い峠道でのろのろと進路をふさいでいた俺たちに
余程のこと業を煮やしたのだろう。
やっと出た見通しのいい場所で、
われわれを追い抜きざまに
「ちゃんとマナー守って走れよ!」
と怒鳴って行った。
おれは反射的に「ああ、すいません」と言ったのだが、
それにおっ被せるように彼女が、
「なによ、あんた!喧嘩売ってんの!」
彼女はいきなりアクセルを踏み、
後ろからぶつけてやる、などと息巻いたが、
峠道で単車相手では勝負にならない。
しかしその時、俺の頭の中に渦巻いていたのは、
「林道女の呪い」、「因果応報」、
「女はいざとなったらみんな同じ」、
などのネガティブワードであった。
その後、彼女とは別れた。
以来、恋人は出来ていない。
怖くて・・・。
(終)