そこそこ霊感のあるデブの除霊方法
俺の友人の渡辺は、そこそこ霊感のあるデブだ。※名前は仮名
これは、つい先日のこと。
六畳一間で一人暮らしの渡辺のところへ遊びに行くと、天井から『妙なモノ』が吊るしてあった。
理由を聞くと・・・。
吊り下げたモノとは
一週間くらい前に、職場の先輩に誘われてヤバイ場所に行って来たらしい。
誘われた、というよりは強引に連れて行かれたと言うべきか。
渡辺の霊感は職場でも有名らしく、面白がられて地元の心霊スポットの霊視案内役のようなことをさせられたのだ。
そこで起こったアレコレは、ありきたりの恐怖譚なので割愛する。
問題なのは、その場所から1体の霊が渡辺に憑いて来てしまったことだ。
曰く、寝ていると布団の上方がピシピシと鳴り始め、金縛り状態に。
やがて宙に能面のような男の顔が現れ、無感情に見下ろす。
他に何をするわけでもなく、ただいつまでも顔を見つめている。
そんな夜が何日も続いたそうだ。
それによって寝不足になった渡辺は、とうとうキレた。
さらに、男の顔が現れるのはいつも同じ位置だということに気付いた。
一計を案じた渡辺は、件のモノを吊り下げることにした。
その夜も現れた能面男だったが、目の前に下がったものを見るや、明らかに狼狽した表情を見せたらしい。
むしろ、怯えた様子だったとも。
その吊り下げたモノとは、洗濯カゴに放り込まれたまま何日も放置されていたパンツと靴下だった。
それが能面男の鼻先にある。
霊が匂いを感じるのかどうかは知らないが、とにかく渡辺は体臭がキツイうえに、痔ろうで水虫に脂足だ。
霊は瞬時に消え、翌晩からはもう来なくなったという。
以上が霊を駆逐したと勝ち誇る渡辺の話。
念の為、まだしばらくは異臭の汚れ物を撤去する気はないそうだ。
俺としては、あれが片付くまでヤツの部屋をまた訪れるつもりはない。
(終)