お札の家 2/3

Sにダミーの家の話はしてあったので、

二人とも落ち着いて

家の横の獣道を目指した。

 

そこでSが、

「ちょぉ待って、煙草に火ィつけるけぇ」

と立ち止まった。

 

なかなか火がつかない。

 

ボーッと白い家を眺めていた自分は、

「ここも中々雰囲気あるなぁ」

と白い家に近づいた。

 

なぜかその普通の民家も、

周りをチェーンで仕切られていた。

 

特に何も感じずチェーンを

くぐろうとすると、

 

「Mっ!!(自分の名前)

 

Sに呼び止められた。

 

驚いて振り向くと、

Sが煙草をくわえたまま目を見開いて

コッチを見ている。

 

何事かワケが分からず

動けないでいた自分だが、

 

Sの視線が自分では無く、

自分の背後に向けられいる。

 

と気づいた時、

全身に鳥肌が立った。

 

背筋が凍るように冷たくなったのは、

生まれて初めてのことだった。

 

すぐにSに向かって走り出したいが、

どうにも足が動かない。

 

完全に、パニックになっていた。

 

それを察してかは知らないが、

突然Sが「うぉぉぉぉぉぉっっ!!」と、

 

馬鹿デカい雄叫びを上げ、

元来た道へ走り出した。

 

その大声に助けられ、

自分も我に返って全力で駆け出した。

 

林道がやけに長く感じ、

絶望的な恐怖感があったが、

 

『後ろを振り返ってはいけない』

 

って、まさに今のこういう状況のことを

言うのだろうな。

 

という考えが、

頭をよぎったのを覚えている。

 

ようやく林道を抜け一般道に飛び出し、

凄い勢いで車に乗り込んだ。

 

車に乗り込むと、

ただならぬ様子を察知した

先輩が聞いてきた。

 

先輩「どうしたんなお前ら!?

何があった!!」

 

自分はガタガタ震えが止まらず、

まともに答えることが出来ない。

 

自分「とにかく早く、車出してください・・・

お願いします・・すんません・・お願いします・・」

 

その場所から離れたい一心で、

それしか言えなかった。

 

怯え方が尋常ではなかったので、

先輩もからかったりせず車を急発信させた。

 

しばらく無言のドライブが続き、

先輩の彼女のすすり泣く声が

聞こえるだけだった。

 

不意に背中を強くバン!バン!と叩かれた。

 

驚いて横を見ると、

満面の笑みを浮かべた

Sの顔があった。

 

S「楽しんでもらえた?w」

 

その一言で全てを理解した。

 

正直Sを殴り倒したかったが、

怒り以上に安堵感と解放感が溢れてきて、

一気に体中の力が抜けた。

 

先輩も状況を飲み込んだらしく、

「S、お前なぁ~」

とミラー越しにSを睨みつけていた。

 

コイツは最悪だ。

 

コイツとだけは二度と、

心霊スポットには近づかない。

 

あーでも、良かった~・・・

先輩も同じ気持ちだったのだろう。

 

普段、怒りっぽい性格だが、

 

Sを責めることはあまりせず、

彼女をなぐさめていた。

 

落ち着きを取り戻した車内は

一気に明るくなり、

 

Sがあの時の状況を再現するなどして、

街に戻る頃には元のテンションで

ハシャイでいた。

 

ちょうどコンビニに差し掛かり、先輩が

「飲みもの買うか」 と言った、その時だった。

 

「ドン!」

 

車の屋根から大きな音がして、

車内が揺れた。

 

先輩はとっさに急ブレーキを踏んでしまい、

後続の車からクラクションが鳴り響いた。

 

先輩「えっ何!?今の何なん??」

 

R(彼女)「とりあえずコンビニ入ろ!

後ろの車に迷惑だし!」

 

自分にも何がなんだかさっぱりだった。

 

鳥か何かかな?

でも有り得るか、そんなこと・・・

 

考えているうちに、

車はコンビニに入った。

 

急いで車から降り屋根を確認するが、

凹んでいる様子はない。

 

携帯のライトで照らしても、

傷が付いたような跡は見当たらなかった。

 

先輩「おかしいなぁ。

絶対何か落ちてきたよなぁ!なぁ!」

 

何が起きたのか全く検討がつかず、

車の周りや近くの道路をウロウロしていたら、

 

Sが降りて来ていないことに気づいた。

 

車に戻り、Sに「どうした?」と聞くが

返事が無い。

 

うつ向いて少し震えている気がした。

 

変な胸騒ぎがして強めに肩を揺すって、

「おいどうしたんなお前!!」

と叫んだ。

 

Sは、しゃがれた声で

「ついてきとる・・・」

と呟いた。

 

Sの一言に自分は正気を失った。

 

自分「ついてきとるって何なん!?

お前あれ嘘だったんと違うんか!!」

 

Sは青ざめて震えている。

先輩の彼女も泣き出してしまった。

 

とりあえず落ち着こうということで、

コンビニで暖かい飲みものを買って与え、

少しずつ話してもらった。

 

(続く)お札の家 3/3へ

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