お札の家(後日談)

最近Sと再会した。

 

きっかけは、同じサークル内の後輩が、

Sと同じ地元だとわかってからだった。

 

後輩に無理言って、先々週の土日を使って

Sの地元に案内してもらった。

 

中学までよくSと遊んだというその後輩は

Sの自宅も知っており、

 

少々強引かと思ったが、

 

前々からSが気になってしょうがない俺は

Sの自宅を訪れた。

 

朗らかな感じで背の低い、

活発そうなSの母親が出て来た。

 

事情を説明すると驚いていたが、

すぐにSを呼んでくれた。

 

玄関にSが出て来た。

 

髪を坊主にしていた。

 

突然の訪問に目を丸くしていたが、 

「よぉ・・・」と苦笑いしながら、

罰の悪そうな声を出した。

 

本当に久しぶりにSの元気そうな姿を見て、

俺は泣きそうになった。

 

部屋に上げてもらい、

色々と話しを聞くことにした。

 

妙に緊張してよそよそしい会話だったが、

Sは次の様に答えてくれた。

 

(以下、長い話しなのでポイントごとに

要約して書いていきます)

 

1、

あの夜何が起こったか?

 

爆睡する自分の横で、

ひたすら眠れなかったS。

 

眠れなかったというか、

Sは敢えて眠らなかった。

 

朝まで絶対に気を緩めまいと、

固く心に誓ったらしい。

 

そして深夜、寒くなったSは、

布団を取りに押し入れを開けた。

 

そこにあの女がいた。

 

Sがリアクションを取る間も無く、

その女はSに重なった。

 

そこからの意識は、

飛び飛びだったという。

 

気づくと便器に向けて

「ウゲェー!ゲェー!」

吐いていて、

 

「本能的に異物を吐き出そうと

したんかな?」

 

と語っていた。

 

しかし出てくるのは血ばかりで、

「自分はここで死ぬかもしれない」

と覚悟したらしい。

 

もう、「吐こう」という意識とは関係なく、

口から血が溢れてくる。

 

俺が背中叩いたり名前を呼び続けたのも、

覚えていないそうだ。

 

2、

何故突然退院したのか?

連絡手段を途絶えさせたのか?

 

病院の医師曰く、『畑違い』

とのことらしかった。

 

声帯はほぼ完全に治っており、

尚も声が出ないのは

Sの意識問題、精神面での傷。

 

つまり、『ウチの管轄外ですよ』

と宣告されたそうだ。

 

Sの母親は、クリニックに通いつつの

学業復帰を薦めたが、

 

Sは退院後、

大学を辞めて実家に帰ると訴えた。

 

何と言われようが、絶対に

折れなかったらしい。

 

その後、両親に迎えに来てもらい、

Sは実家に帰った。

 

S「半分狂いかけとったなw

でもどうしても、病院やクリニックで

何とかなるとは思われんかった」

 

女は、毎日夢に出てきた。

 

以前には無かった夢遊病の癖も、

ついていたそうだ。

 

状況が酷くなる前に

神社か寺で祓ってもらい、

 

田舎で静かに暮らそうと

考えていたらしい。

 

連絡手段を途絶えさせたのには、

ただ「心配させたくなかった」

とだけ答えたが、

 

俺はSが、

「全てを忘れたかったんじゃないか」、

と考えている。

 

3、

あの女はどうなったのか?

 

実家に戻る前に、両親に全てを

打ち明けていたSは、

 

両親同伴の元、地元にある

大きな寺を訪れた。

 

驚くことに、寺に着くなりSは

住職により本堂に案内され、

 

「ここで全てを打ち明けなさい」

 

と言われた。

 

声の出せないSは、紙とペンで

全てを打ち明けようとした。

 

しかし、突然途中でペンが止まった。

 

あれだけ意識がハッキリしている時に、

しかも、呼吸が出来ない程の金縛りに

あったのは初めてだったという。

 

突然Sが苦しみ出したので、

住職達は大急ぎでお祓いを始めたらしい。

 

しかし目の前が真っ暗になり、

 

数人のバタバタという足音、

お経や金属音を暫く聞いて、

 

プツリと意識を失ったらしい。

 

次に目を覚ますと、

寺の客間の布団の上で、

住職と両親が側にいた。

 

住職が話してくれた。

 

特に強い怨念を残した霊で、

憑き方が普通ではなかった。

 

内側から侵食しており、

 

Sはもう少し遅ければ、

本当に危なかったとのこと。

 

住職は、

 

「中々出て行かないので、

こんなモノを使いました」

 

と木彫の仏さまを見せてきた。

 

身代わりの効果があるらしく、

簡素な作りの人形だったが、

 

Sにはとても神々しく見えたという。

 

4、

あの女はどうなったか?(その2)

 

Sが声を失ったのにも、

意味があるらしかった。

 

声には力があるらしく、

霊が媒体を支配する際に

その力を奪う、

 

と言うのはよくあることらしい。

 

言霊(コトダマ)と霊は、

密接に関係しているそうだ。

 

お祓いが済んでもまだ声を出せない

様子のSを見て、両親は心配したが、

 

住職曰く、

「もう大丈夫。栄養を摂って

数日落ち着けば声も出るでしょう」

とのこと。 

 

実際、一週間程で徐々に声は回復し、

以前通りの生活を過ごせるようになったという。

 

その後しばらくして、Sは派遣業者に勤め、

無事に今まで過ごしてきたとのこと。

 

以上が自分の霊体験の全てです。

 

Sはお祓いの後、あの女はおろか

一度も霊を見ることがなく、

 

「霊感を無くしてしまった」

 

と語っていました。

 

身代わりの仏さまに、

そういう力ごと封印されたのでしょうか?

 

とにかく、

本当に危ない心霊スポットには、

 

遊び半分じゃなくても、

近づくもんじゃないってことですね。

 

我々に、そういう異界のモノを

どうにか出来る力なんてありゃしないんだ、

 

と思い知らされました。

 

(終)

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