お札の家 3/3

S「ハナッからヤバかったんじゃ、

あの場所は。

 

バリケードあったじゃろ?

 

あれ、わざわざ林の奥まで逸れたのは、

有刺鉄線があったからじゃなくて、

 

バリケードのすぐ向こうに、

人が立っとったからなんよ・・・

 

お前には見えてなかったみたいだから、

何も言えんかったけど、

 

あそこで行くのヤメようて言ったら

糞カッコ悪いやん。

 

バリケード越えても、

霊はウジャウジャおったよ。

 

林の中や林道に立ってた。

 

でも、俺らには何の興味も

無さそうに見えたから、

何とか平気なフリが出来たんよ。

 

・・・ダミーの家に着いた時、

そこにはホンマに霊はおらんかった。

 

やっと安心して、

煙草吸おう思ったんじゃ。

 

火つけよる間にお前がどっか行くから、

お前の方見たらおったんじゃ。

 

髪の長い女が。

 

チェーンくぐろうとしとるお前を、

見下ろしとった。

 

とっさにお前呼んで逃げようとしたけど、

遅かった。

 

お前が振り向いた時には、

その女がお前の背中に抱きついとった。

 

そっからはあんまり覚えてない。

無我夢中で車に逃げ帰って。

 

下向いてガタガタ震えとった。

 

すぐにお前も乗り込んで来たけど、

恐くてお前の方、向けんかった。

 

でも下向いている俺の視界にも、

お前の足元まで垂れている

長い髪の毛が飛込んできたんよ。

 

もう我慢出来んかった。

 

どうにでもなれと思って、

お前の背中を思っきり叩いたんよ。

 

効くとは思わんかったけど・・・

女はいなかった。

 

・・・後はわかるだろ?

俺・・・嬉しくてさ・・・」

 

そう話すSの声は、

相変わらずしゃがれており、

全員が絶句した。

 

力を振り絞って聞いてみた。

 

自分「それで・・・さっきの車の音はその女で、

まだ俺に憑いてるっての・・・?」

 

S「・・・多分、見えるヤツに乗り換えたか、

お前の背中叩いたのがアカンかったか・・・

いま俺、鏡とか絶対見たくない・・・」

 

Sは震えているのに、

妙な汗をベットリとかいていた。

 

先輩は心配したが、

Sは自宅に帰ると言って聞かない。

 

独り暮らしってこともあって

心配になった俺は、

Sの家に泊まるコトにした。

 

めちゃくちゃ怖かったのだが。

 

Sのアパートに戻った自分達は、

飲む予定で買っておいた酒も飲まず、

直ぐさま寝てしまった。

 

ビクビクして寝るどこじゃないと感じていたが、

不思議とすぐに意識が飛んだ気がする。

 

次に意識が戻った時、

洗面所の方から、

 

「ゲェ~~!!ゲェ~~!!」

 

と何かを吐く声が聞こえた。

 

急いで洗面所に向かうと、

Sが便器にうずくまって吐いていた。

 

自分「大丈夫かっ!?S!!

しっかりしろ!!Sっ!!」

 

叫びながら、夢中で背中を

何度もさすった。

 

でも、便器の中を覗いて凍りついた。

 

Sは血を吐いていた。

 

飛びそうになる意識を必死で保ち、

狂ったようにSの背中を叩きまくった。

 

自分「コノ野郎!!ふざけんな!!

コノ野郎!!」

 

泣きながら、ひたすらSの背中を

叩き続けた。

 

寝るために薄暗い豆電球にした

部屋の電灯が、

 

風も無いのにユラユラ揺れていたのを、

鮮明に覚えている。

 

どのぐらい時間が経ったのかわからないが、

呼んでおいた救急車が到着し、

 

運ばれるSと共に救急車に乗り込み、

病院に向かった。

 

すでにSの意識はなかったが、

俺の服を掴んで離さなかった。

 

Sが救急病院にて治療を受けた後、

医者から説明を受けた。

 

Sは声帯を損傷している、

とのことだった。

 

ただ、

「めちゃくちゃに叫んだ程度では

そうならない」

という事情を聞かされたが、

 

俺は答えることが出来なかった。

 

翌日から別の病院に入院し、

俺は毎日の様に見舞いに行ったが、

声帯治療のためSは話せなかった。

 

紙に文字を書いての会話となったが、

むなしく、そして悲しくて、

あまり多くの会話は出来なかった。

 

もちろん、あの夜の事など聞けない。

 

しばらくそんな感じで過ぎていき、

もうじき退院というある日、

 

見舞いに行くとSがいなかった。

 

聞けば、「昨日退院した」

ということらしかった。

 

連絡ぐらいよこせよと思いつつ、

Sに退院おめでとうのメールを送った。

 

ポストマスターからメールが返ってきた。

Sはメアドを変えていた。

 

嫌な予感がして慌てて電話するが、

番号自体を変えていた。

 

とにかく大学に来るのを待つしかない

と思ったが、Sは来ない。

 

嫌な予感は的中した。

 

Sは大学を辞めていた。

 

総務課で実家の番号を調べて欲しい

と頼んだが、

 

「辞めた生徒の電話番号を

勝手に教えることは出来ない」

 

とのこと。

 

完全に、連絡を取る手段が途絶えた。

 

その後約2年間、俺が大学在学中は

Sに会うことはなかった。

 

(終)

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