3人の記憶が一致しなかった出来事 1/2

廃倉庫

 

高校の時の話。

 

友人の伊藤(仮名)の両親が、

法事で2~3日、

 

家を空けることになった。

 

俺と田中(仮名)は暇な夏休みを

送っていたので、

 

泊りがけで遊びに行くことにした。

 

夕方から集まり、

 

何か料理とか作って、

ちょっとした合宿気分。

 

夜になりダベっていたら、

怖い話で盛り上がりそうになった。

 

ちょうどその時、

 

伊藤の中学時代の友人だったという

鈴木(仮名)も遊びに来た。

 

大人しくて、真面目そう。

 

一見、いいところの坊ちゃん風で、

幼い感じがした。

 

かなり小柄で、

高校生には見えなかった。

 

俺と田中の二人は鈴木と初対面だったが、

鈴木はすんなり話の輪に加わった。

 

伊藤が都市伝説みたいな話をした後、

俺がとっておきのネタを始めたのだが、

 

田中のノリが悪い。

 

くだらないツッコミや煽りを入れて、

茶化してくる。

 

「おまえ本当は怖いんだろ。

だから白けさせようとしてんだな」

 

「違うよ。

おまえの話が全然怖くねえんだよ」

 

当時、俺らは色んなことで、

互いにライバル意識みたいなのがあった。

 

それが口論に発展することもしばし。

 

見かねた伊藤が、

諭すように提案してきた。

 

「おまえらどっちがビビリか、

肝試しで対決してみたら?」

 

田中は乗り気だったが、

俺は少し腰が引けた。

 

「○○橋の方に防災倉庫がある。

そこは出るっていう噂だ。

 

中学の時の先輩が、

彼女と一緒に見たとか言ってた。

 

そこでやろう」

 

鈴木はもう遅いので帰るとのこと。

 

三人で防災倉庫に向かったのは、

夜11時くらいだったか。

 

橋の手前にちょっとした空き地があり、

そこに古いプレハブ小屋があった。

 

入り口は建付けの引き戸で、

掛け金に南京錠がしてあった。

 

「実はこれ、壊れてんの」

 

伊藤はその古い南京錠を外しながら、

淡々と言葉を続けた。

 

「先輩、彼女を連れ込んで

やってたらしい。

 

で、二人して見たんだと。

 

何でも、ホームレスがここで

行き倒れになったことがあって、

 

多分それじゃないか」

 

中は教室くらいの広さで、

 

土嚢(どのう)やカラーコーン、

ポールなどが整然と置いてあった。

 

数年来の川の護岸工事で

これらの用具も使用されず、

 

部屋全体が埃っぽい。

 

天井には裸電球が一つ吊るされていたが、

スイッチは手元になかった。

 

「一人でいるのはさすがにやばいから、

おまえら二人で1時間。

 

その後、

一人30分の延長戦。

 

それをギブアップした方が

負けってことで」

 

田中はOKと即答した。

 

にやにや笑いながら、

俺を見ている。

 

(もう戦いは始まってるってか?)

 

俺は田中の挑発に乗ってしまった。

 

「表から鍵掛けとく。

1時間したら開けに来る」

 

「懐中電灯は置いてけよ」

 

伊藤にそう言うと、

スモーカー田中が百円ライターに着火して、

 

「これがあれば大丈夫だろ」

 

と先手を打ってきた。

 

土嚢に登れば裸電球を

点灯させることも出来るし、

 

嵌め殺しの窓もある。

 

その下は橋の常夜灯からの

明かりも差し込んでいた。

 

俺はすかさずその場所を確保し、

座り込んだ。

 

そして我慢比べと覚悟して、

だんまりを決め込んだ。

 

田中はタバコに火をつけ、

夜目に慣れた頃に口を開いた。

 

「伊藤の先輩って知ってるか?」

 

「さあね」

 

「ここに彼女連れ込んで

やったとか言ってたよな。

 

何してたのかね~」

 

「アホか」

 

田中も静寂や暗がりが怖いのだろう。

 

だが、

 

ここで普通にダベっていては

勝負にならない。

 

俺は意地を張って田中を無視した。

 

「たぶんこの上にシートか何か

敷いてやったのかな~」

 

田中はすっと立ち上がり、

辺りをライターで照らした。

 

部屋の中には大と小の

土嚢のブロックがあり、

 

その間が通路になっている。

 

小さなブロックの方が窓側で、

俺らはその上に腰掛けていた。

 

なぜか傍らに、

 

蛇のようにドグロを巻いた

ロープがあった。

 

「こっちの奥には何があんだろう~」

 

田中は土嚢の間を、

注意深く歩き始めた。

 

信じられない行動だった。

 

俺は取り残される恐怖に怯え、

思わず後を追おうとした。

 

頭の中には、

死んだホームレスのことしかなかった。

 

(続く)3人の記憶が一致しなかった出来事 2/2

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