夜の川原で泳いでいたら 2/2

川原

 

Aは迷った後に、

 

黒い物体の方へと

走っていった。

 

眼をつぶり、

時々半眼を開けながら、

 

黒い物体にぶつからないように

その場を走り抜けた。

 

山の麓まで出ることができ、

少し安心して後ろを振り返った。

 

すると、

 

先ほどの物体が追いかけて

来ているではないか。

 

ナメクジなんて動きではない。

 

まるで地面を滑るようにして、

Aに迫っていた。

 

山の麓まで出たおかげで、

 

月明かりがその物体を

微かに照らし出した。

 

しかしそれでも、

その物体は見えない。

 

周りの草や木なんかは

それなりに見えるのにも関わらず、

 

その物体だけはどうしても

見えなかった。

 

まるで暗闇が地面を這っている

ように見えたと言う。

 

A「うわあぁぁぁぁ!」

 

Aは一心不乱に駆け出した。

 

5分ほどしたであろうか、

 

Aは近所の小学校まで

逃げることが出来た。

 

Aは逃げる時にとっさに掴んだ

自分のバックから、

 

Tシャツを取り出し、

身に着けた。

 

しかし、

さすがに深夜の小学校に、

 

トランクスとTシャツ姿で

いるところを見つかったら、

 

問答無用に捕まると思い、

 

Aはその後は見つからないように

帰路に着いた。

 

途中、後ろから何かに

 

追いかけられているような

気はしたものの、

 

あえて振り返らず小走りで

10分ほどで家に着いた。

 

Aはそのままお風呂に入り、

 

逃げるように布団に入ると、

眠りについてしまった。

 

そして翌日、

 

Aは目を覚ますと、

 

すぐにBのことが気に掛かり、

電話を入れた。

 

B「なんだよ、

こんな朝っぱらから・・・」

 

Bは何事も無かったかのように

話している。

 

Aは不思議ながらも、

あの後の経緯を尋ねた。

 

B「は?何言ってんの?

昨日ずっと家に居たし。

 

まずお前に電話なんて

かけてないし」

 

予想外の返答が返ってきた。

 

Aは必死に昨日の出来事を

説明した。

 

B「どうせ夢の中のことだろ?

お前、寝ぼけすぎ」

 

Bの返答に苛立ったものの、

同時に安心感も出てきた。

 

そのまま電話を切り、

 

何気なく着信履歴を

確かめていた。

 

どうせ残って無いだろと

思ったのもつかの間・・・

 

あった!

 

確かに昨日の夜10時に、

Bから着信がある。

 

Aはとっさにバックを確かめた。

 

昨日のままだ・・・。

 

これは変だと思い、

昼になるとBの家に行った。

 

Bはやはり何も無かった

かの様な対応で、

 

おばさんに聞いても、

 

Bはその時間にちゃんと

家に居たと言う・・・。

 

Bがその川原へ確認に行こう

と言い出したが、

 

Aはとてもそんな気にはなれず、

遊ぶこともなく家へ帰った。

 

そして夜が来て、

 

Aがもう昨日の事は忘れようと、

テレビを見ていた頃である。

 

突然、

Aの携帯が鳴った。

 

Bからである。

 

何か思い出したのかな?と思い、

その電話を取ってみると、

 

『なんで昨日は逃げちゃったの?』

 

それは、明らかに

Bの声ではなかった。

 

Aは一気に寒気に襲われ、

そのまま急いで電話を切った。

 

再び、

Aの携帯が鳴る。

 

予想通り、Bから・・・。

 

いや、謎の者からだ。

 

Aはすぐに電源を切った。

 

しかし、

 

それでもしつこく着信音のみが

鳴り響いたと言う・・・。

 

その後は何も無いらしい。

 

しかし、

その川の下流では、

 

毎年数人は溺れて

犠牲になっていることは、

 

紛れもない事実である。

 

果たしてその原因は、

 

ただ川に溺れてしまっただけ

なのかどうかは分からないが・・・。

 

(終)

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