川べりで拾った古い携帯電話 2/2

携帯電話

 

それらは恐らく表示件数の限界を、

軽く超えていたのでしょう。

 

私は周りを見渡しました。

 

何も居ないのです。

 

動いているのは、

床の異常な携帯だけなのです。

 

音を立てているのも、

床の携帯だけなのです。

 

それでも、

 

私は何かが床をガリガリと

引掻く音を聞きました。

 

しばらくして、

それは止まりました。

 

静寂の中で、

 

私は放心したように

自分の携帯を取り出します。

 

パニックのまま、110番を押しました。

 

呼び出し音が自分の携帯から聞こえます。

 

しかし、

 

普通ならば即座に出るはずの警察の方は

全く出ないのです。

 

ただ呼び出し音が耳元で響くだけです。

 

そして、

床の携帯がまた動き始めました。

 

電話の着信を告げているです。

 

その携帯が、ヴー、ヴーと、

床を擦るのです。

 

私にはそれが、

 

ゆっくりとこちらに近づいて来るような

錯覚さえ覚えました。

 

・・・いえ、

 

きっとそれはゆっくりとこちらに

近づいて来ているのです。

 

たゆんでいたはずの充電ケーブルが伸びきり、

かつん、と音を立て外れました。

 

部屋全体が揺れているのでは、

と思うような中、

 

私の掌の中の携帯は、

未だ間抜けな呼び出し音のままなのです。

 

私は自分の携帯から、

今、目の前の携帯に電話をかけているのかと、

 

そう疑う様な状況でした。

 

しかし、

 

自分の携帯のディスプレイを確認することは

出来ませんでした。

 

私の双眸は目の前をのたうち、

 

※双眸(そうぼう)

両方のひとみ。両眼。

 

生き物のようにゆっくりと近づいてくる

電子機器に釘付けでした。

 

一瞬、目を離した瞬間に、

ソレが私の目の前に来ているのではないかと。

 

そして今、真後ろには、

 

きっといつかの友人皆が見ていたようなモノが

存在しているのでは無いかと。

 

私は金縛りに遭った様に、

立ち竦んでいました。

 

逃げ場はありませんでした。

 

十分な時間を経て、

 

私の足元の数十センチ先に

到着した携帯電話は、

 

唐突に止まりました。

 

私は、それが着信が切れたのでは無く、

電話に出たからだと分かりました。

 

何故なら、

 

水の溜まった洗面台の栓を抜いたような

ごぼごぼという音が、

 

携帯から流れ出したからです。

 

そして、

 

金切声とも、金属を引掻く音とも取れる

不快音が響きだし、

 

私は崩れ落ちました。

 

人の声らしきものが入った瞬間、

猫が携帯を押し潰しました。

 

きっと、

通話終了ボタンを押したのでしょう。

 

獲物を捕えたと言わんばかりの目で、

携帯を前足で踏み潰し、

 

猫は私をじっと見ました。

 

そこでようやく耳元に、

 

エコーがかかった警察の方の声が

聞こえて来たのでした。

 

即座に私は最寄りの交番まで、

 

猫とともにこの不気味な携帯電話を

届けに行きました。

 

数日後、

警官の訪れと共に、

 

自宅の目の前の道路下にある

地下の下水道からは、

 

それが川に合流する所にある排水口の

鉄格子の内側に手錠で拘束され、

 

衰弱し死亡したと思われる女性の

白骨死体が見つかったことを告げられます。

 

この女性は数年前に行方不明になったこと。

 

いつか見つかることを祈って、

両親が携帯の支払いをし続けていたこと。

 

そして、

 

警察は私がなぜこの携帯を持っていたか、

署で聞きたがっていることを告げられました。

 

署で、これまでの出来事を、

今まで書いたように伝えると、

 

即座に釈放になりました。

 

どうやら、

 

祖父宅が建ったかなり後に連れて来られて

死んだことが判明したことが、

 

大きかったようです。

 

何より、下水道の内側には、

普通の人は入れません。

 

そして、

 

これは警察の方が署の出入り口で

話してくれた事なのですが、

 

未送信メールの内容に、

犯人らしき名前があったこと。

 

異常な件数に膨れ上がった未送信メール数は、

全て圏外で送信失敗だったこと。

 

何故か長い時間差はあるものの、

3年に渡って送り続けられていたこと。

 

を伝えられました。

 

家に帰った私は、

地下室で携帯を開きました。

 

電波が3つあります。

 

壁に額をつけ、

 

もし誰か家に居たら、

もし彼女の携帯が自分と同じ機種なら、

 

などと、

取りとめも無いことを考えていました。

 

そして、

 

3年間に渡って送り続けられた

未送信メールと、

 

最後に私の元で受信した

電話に思い当たり、

 

逃げるように地下室を後にしました。

 

普通に考えれば、

3年間もバッテリーが持つはずもないですし、

 

下水管ですから、それなりの量の水も

流れ出ていたはずです。

 

書き忘れてしまいましたが、

 

警察の方が確認した時は

携帯は電源さえつかず、

 

メモリーから確認したそうです。

 

そして、

 

私の目の前で受信したはずのあの着信も、

記録には無かったそうです。

 

携帯が圏外にいた数年間と、

私が交番に届けるまでの間は、

 

この携帯は何か本当によくわからない

オカルト的な存在だったのでは・・・

 

(終)

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