山でのイタズラ計画が忘れられない後悔に 1/2

虫取り

 

友人と酒を飲みながらテレビを見ていると、

 

殺人で捕まったという、

人相の悪い男が映し出された。

 

事件現場の山中をバックにして、

 

微かに頬に傷のある男の写真が

画面の右上に映し出される。

 

キャスターは、

 

他にも余罪がある可能性もある

と言っている。

 

友人はその事件現場の

山の映像を見ながら、

 

子供の頃の思い出話を

呂律の回らない口で話してくれた。

 

以下は友人の話だ。

 

俺は仲間と”虫採り少年”という

イタズラを計画していた。

 

それは、

数人で全く同じ格好をして、

 

観光客が山道を車で登って来る時に、

前を横切るというものだ。

 

同じ格好の少年が何度も横切るという事で、

観光客は幽霊を見たと誤認するはずだった。

 

どこかでそんな話を聞いたと思うのだが、

 

何しろマイナーな話なので

出所は思い出せない。

 

始めは「面倒くさい」「ばれたら怒られる」

などの反対意見もあったのだが、

 

夏休みで暇という事もあったし、

何しろ、

 

ばれても”虫採りに来ていただけ”

という言い訳が出来ると言うと、

 

現金な事に次第に皆乗り気になり、

2~3日で実行日まで決定した。

 

※現金な

自分が損するか得するかですぐ態度を変える、と言う意味。

 

しかし、どういう訳か、

 

友達の一人(A)は最後まで

この計画には乗り気ではなく、

 

「イタズラは良いけど、

やっぱり場所を変えないか?」

 

と言っている。

 

勿論、そんな気は俺達には全く無かったし、

嫌なら降りろと言って黙らせた。

 

この時、もう少しこいつの言い分を

聞いておくべきだったと思う時がある。

 

俺らは早速、

同じような服装を用意し、

 

(目立つように白に統一した)

 

虫網などは家にあるものを

適当に似せて加工した。

 

地元が山のすぐ傍である事もあって、

 

虫網などは何処の家庭にもあったし、

それらの道具には困らなかった。

 

麦藁帽子を被って鏡の前に立ってみると、

 

身長に多少の差はあれど、

遠目には違いなど分からない様に感じた。

 

一種の怪談話という位置付けでもあるから、

夜やろうという話も出たが、

 

「真っ暗な中で一人で待っているのか?」

 

という一言で却下された。

 

俺たちは蛇行する山道に、

 

一番手から四番手までを

じゃんけんで決めた順番で配置し、

 

車が来たらおもむろに横切って、

そのまま森の奥に隠れる事にしていた。

 

すれ違うのがやっとの山道なので、

 

他から頂上へ向かう事は出来ない為に、

必ず掛かると考えていた。

 

勿論、相互に連絡なんて

つけようがなかったので、

 

(この頃は携帯もPHSも

一般的ではなかった)

 

車の音で判断する以外になかった。

 

俺は二番手で暫く待っていたが、

 

一度だけ甲高い

鳥の鳴くような音がした後は、

 

一向に車がやって来ない為に、

いい加減飽きてきた。

 

日も傾いたので、

止む無く中止して帰る事にし、

 

大声で上に居る奴に声を掛ける。

 

暫くして自転車で降りて来た

友人と共に山道を下り、

 

ふもとの駐車場近くまで来たが、

一番手の奴(A)が見当たらない。

 

俺たちは、

 

「嫌がっていたから

バッくれたんじゃないのか?」

 

などとブツブツ言っていたが、

 

日も暮れて辺りは真っ暗になったので、

仕方なくそのまま帰宅する事にした。

 

勿論、Aの奴には明日にでも

文句を言うつもりだった。

 

だが、その夜、

 

Aの母親から『まだ帰っていない・・・』という、

焦った口調で電話が掛かってきた。

 

当然のように、

他の家の連中も大騒ぎとなった。

 

俺は親にどやし付けられながら

事の次第を話し、

 

何発か殴られる事になった上に、

警察でも三人揃って説教された。

 

警察沙汰にまで発展した事で、

 

俺たちは警察に捕まるのではないか、

という恐怖がじわじわと襲う。

 

Aの心配もあったが、

 

自分達が何か取り返しの付かない事をした、

という気持ちで押し潰されそうだった。

 

警察が何日も捜査をするが、

結局Aは見つからなかった。

 

この山自体には危険な動物は居ないが、

夏とはいえ、夜は寒い。

 

また、谷間や亀裂などもあり、

地元の人間でも近づかない場所もある。

 

山中で迷子になるという事は、

地元の慣れた人間でも命の危険がある。

 

あの日から何日か経って、

俺は一人でふもとの駐車場に居た。

 

俺たちは山への立ち入りを禁止にされたので、

ふもとでAを待つ以外になかった。

 

その時、

声を掛けられる。

 

その声の主は中年の男で、

 

顔に絆創膏を貼っていた事が

やけに印象に残っている。

 

男は、白い服を着ていた俺を

誰かと間違ったようで、

 

振り向いた俺をまじまじと見て、

強張った表情を緩めた。

 

男は、あの日の山道で、

白い服の男の子を見たという。

 

俺がその男の子かと思って、

声を掛けてきたらしい。

 

俺は心臓が跳ね上がる気がした。

 

(続く)山でのイタズラ計画が忘れられない後悔に 2/2

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