山でのイタズラ計画が忘れられない後悔に 2/2

虫取り

 

この人は、

Aの事を知っているのだろうか?

 

でも、この男の雰囲気は何と言うか・・・

嫌な感じだった。

 

説明は付かないが、

 

何となく本当の事を話す気には

なれなかった記憶がある。

 

だから俺は、

 

「この時期になると、

 

この山で死んだ子供が時折

姿を見せる事もあるようですよ」

 

と嘘をつく。

 

「別に悪さはしないと

言われていますが・・・」

 

我ながら何でこんなにスラスラと

言葉が出てきたのか不思議だ。

 

男は俺を凝視するように見つめると、

 

俺があの日、

山道に居たかどうかを確認してくるが、

 

俺が嘘をつくと、

あの日に見た事を話してくれた。

 

「そうなのか・・・

 

白い格好をした子供が

泣きながら逃げるのが見えたんだが、

 

その後を黒いボロボロの服を着た奴が、

 

真っ黒い網みたいな物を持って

追いかけて行ったんだ。

 

ワシは思わずブレーキを踏んだんだが、

あっという間に森の中に消えてしまってな。

 

そうか、幽霊だったのか」

 

その男は呟く様に言った。

 

俺は、逆に震えだした。

 

化け物が居たというのか?

 

俺は男の話も耳に入らず、

ガタガタと震えだす。

 

男は、「あの山には入らない方がいいな」

とだけ言い残し、

 

近くに止めてあったごつい4WDに乗って、

去っていった。

 

俺は仲間に電話をすると、

男の話を伝える。

 

しかし、そんな話を

誰が信じるというのだろうか?

 

警察でも見つけられないのは、

 

お化けがAをさらったからだとでも

言うつもりか?

 

そんな言葉で、

 

俺は真相に触れたと感じた気持ちが

急速に萎んでしまった。

 

だから、

その話は俺達だけの秘密だったし、

 

二度とあの山で

イタズラをする気は無かった。

 

警察も10日ほどで捜索を打ち切った。

 

俺達は何度か内緒で山に入って

山道周辺を探すが、

 

結局Aの痕跡は見つからなかった。

 

あれ以来、

 

あの山には化け物が出て

子供をさらうという話が、

 

いつの頃からか広まったらしい。

 

今でも時折思う時がある。

 

呂律の回らない口調で友人が言う。

 

「本当はあの時、

じゃんけんで俺が一番手だったのだが、

 

始めで失敗すると格好悪いから、

二番手に代えてもらった。

 

俺があのまま一番手だったら、

Aはきっと生きていたと思う」

 

そう言いながら、

友人は酒を呷った。

 

※呷る(あおる)

一気に飲む。仰向いてぐいぐい飲む。

 

「あいつの言う事を聞いて、

 

違う場所でやっておけば

化け物なんかに・・・」

 

その後、

 

テレビでは何人かの遺骨と遺体を

幾つかの場所で発掘したという、

 

続報が流れていた。

 

俺は今でも殺人事件のニュースを見ると、

 

友人の後悔で憔悴した表情を思い浮かべて、

憂鬱になる。

 

(終)

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