友達が怪しいバイトの依頼を受けてきた 2/2
二人で懐中電灯を照らしつつ中を覗いてみると、そこは普通の和室で、隙間から見ているだけなのではっきりとは分からないが、どうやら真ん中にテーブルが置いてあるようだ。
中に人がいるような気配は全く無い。
何がなんだか分からない。
声はいつの間にか聞こえなくなっていたが、さっきまで明らかに複数の人の話し声が中から聞こえていた。
もう一度、二人で懐中電灯を照らしながら中を覗き込むと、ある事に気が付いた。
テーブルの上に、20センチくらいの箱が置いてある。
箱を照らして見て、俺達はゾッとした。
その箱は、自転車に使うチェーンロックらしきものや鎖のようなもので何重にも巻かれていて、さらに南京錠がいくつか付いていた。
俺と友人は「なんだよあれ、気持ち悪りぃな・・・」と、窓から少し離れて話していると、突然「バン!」と、内側から窓に何かがぶつかる音がした。
ビックリして二人で窓の方を見た時、俺達は叫び声をあげてその場から逃げ出した。
何が起きたかというと、板が打ち付けられた窓の隙間から、4~5人の『眼』が俺達を板の隙間から見つめていた。
性別や年齢は分からない。
とにかく隙間から『眼』がいくつもこちらを見ていた。
それだけしか分からない。
家から200~300メートルくらい離れた街灯の所まで走り、俺達が息を切らしてへたり込んでいると、叫び声を聞いたのか近所の人らしいお爺さんが、「こんな夜中に何をやってる!」と俺達に話しかけてきた。
俺達は恐怖と息切れと動揺で、「窓に眼が・・・」とか、「話し声が・・・」とか、「バイトで掃除に来て・・・」とか、支離滅裂な事を言っていたように思える。
が、お爺さんはそれで何かを察したのか、急に口調が柔らかくなり、「とにかく家に来なさい。そこでゆっくり話を聞くから」と、素性も知らない俺達を家にあげてくれた。
お爺さんの家に着くと、お爺さんの奥さんらしいお婆さんも起きてきて、俺達にお茶を出してくれた。
それで俺も友人もある程度落ち着き、バイトの依頼を受けて泊り込みであの家の片付けに来た事、夜中に変な声を聞いて調べに行った事、厳重に板張りされた部屋を覗き込んだら沢山の眼に見つめられた事などを話した。
するとお爺さんは、「あの家は何十年も前に土地の権利関係で色々あったからな。お金は諦めて君達はバイトを断りなさい。今日は泊めてあげるから明日家に帰りなさい」と言った。
お爺さんはあの家の事について何か知っているようだったが、それ以上は話してくれなかった。
俺達は申し訳ないと思いながらも、その日はそのお爺さんの家に泊めてもらった。
翌朝、朝飯までごちそうして貰った俺達は、お爺さんとお婆さんにお礼を言って帰宅する事にした。
最寄駅までの道中、俺がバイトを依頼してきたおっさんに電話して、「金は要らないし交通費も返すからバイトは無かった事にしてくれ」と言うと、おっさんはしきりに事情を訊いてきた。
隠す理由もないため、昨夜あった話をすると、おっさんは独り言のように「まだ出るのか・・・」と言った。
そして、「交通費はいい。でもバイト代は1日分も出せないからな。家の鍵は玄関マットの下に入れておいてくれ」と言うと、早々に電話を切ってしまった。
口には出していなかったが、おっさんはかなり怯えていたのが分かった。
帰り際、俺と友人はあの家で何があったのか、それだけは気になった。
そこで、携帯で図書館の場所を調べ、当時の新聞記事などを探してみたのだが、それらしき事件などは見つからなかった。
そこでふと思いつきで、今度は少し離れたところにある法務局へ行ってみた。
法務局であの家の土地の登記簿を調べてみると、そこには『1966年時効収得』と書かれていた。
※時効取得
他人の所有物を一定期間占有することによって自分の物とすること。取得の意思を持って公然と争いなく占有し続ければ、他人の物と知っていた場合は20年で、知らなかった場合には10年で自分の所有となる。
それで俺は、あの場所で何があったのか、ある程度分かった気がした。
(終)
その土地が欲しくて殺されてる奴は
たくさんいるかもね
パチンコ店なんて
立地条件がいいよね
雨後の筍のように設立されてるソシャゲ会社はやたら立地がいいよなあ
ガチャに規制を掛けようとした経産省の役人も不審死してるしさ