なぜかその事故のことが無性に知りたくなり
これは、前に住んでいた場所での体験談。
住まいの比較的近くで、『昔にあった交通事故』のことを友人から聞いた。
そしてなぜかその事故のことが無性に知りたくなった俺は、色々な手段で調べた。
挙句の果てに、グーグルマップで事故があった場所の当たりをつけて、直に確かめに向かう。
どうしてそこまで執着していたのか、今でもよく分からない。
何かに呼ばれたのか?
線香、ゲームセンターで得た人形、紙パックのミルクティーを持って、ピンポイントで『絶対ここだ!』という自信をもっていた。
迷うことなく目的地に着いた俺は、なぜか号泣し始めて、近くを通ったおばちゃんに介抱された。
おばちゃんに理由を聞かれても、俺は「よく分からない・・・」の言葉しか出てこない。
お互いに困惑する中、俺はとりあえず持って来ていた人形とミルクティーを置いた。
するとおばちゃんが、「あれ、兄ちゃんがいつもお供えしてた人やったんね?」と言ってきた。
おばちゃんは続けて、「いっつもそこに置いて行ってたやんね?そら悪いこと聞いたわ、ごめんな」とかなんとか。
ワケが分からず、俺は落ち着くまでおばちゃんに介抱された。
しかし帰ろうとすると、おばちゃんの雰囲気が何か変わった。
落ち着いた感じの、少し物哀しい感じに。
そして、おばちゃんが「ありがとう」と言った。
さっきまでの方言っぽい話し方ではなく、標準語に近い感じで。
その時に俺は、たぶんそれはおばちゃんじゃなくて事故で亡くなった子なんだ、と勝手に納得した。
ありがとうの言葉の後に、「たぶん、もう来んよ」と俺が返すと、「うん、たぶん大丈夫」とその子は言った。
そして乗ってきた自転車に跨った俺に、おばちゃんが「頑張りな!くよくよしたらあかへんで」と励ましてくれた。
今でもこの体験はよく覚えているが、その事故の場所や、どんなの事故だったのか友人に尋ねても、友人は「そんな話したっけ?」という反応をする。
それに、地域で起きた事故を調べても、それらしいものは出てこない。
(終)