廃屋へ侵入した直後に40度近い高熱が襲う
これは完全に俺の自業自得な話だ。
高校2年生の時、当時の俺はかなり調子に乗っていて、よく心霊スポットに行ったりしていた。
そういえば住んでいた学生寮も一応は心霊スポットで、夜中にインスタントカメラを片手に歩き回ったりもした。
余談だが、その学生寮に出るという噂の幽霊は、看護婦と高速でハイハイする赤ちゃんの二つ。
どうやらここは元産婦人科だったらしい。
地元には、▲▲峠だとか旧■■トンネルみたいな有名な心霊スポットはほとんどないが、ひとつだけ有名なものがある。
地元の人間でオカルト好きなら誰でも知っているレベルの心霊スポットが、学生寮の近くにあった。
それは『ホワイトハウス』と呼ばれる建物だ。
心霊遊びはほどほどに
名前の通り真っ白な家で、長い間放置されている様子。
多くの蔦が家中に絡み付いていて、窓ガラスも所々が割れている。
たしか、引きこもりの知的障害者の子供がいて、一家心中したという。
その後、建物を壊そうとした業者が怪我をしたとか死んだとか、建物に入った若い奴らが怪我をしたとか死んだとか・・・。
まあ、ありがちな話だ。
そんなホワイトハウスに、俺は友達と二人で午後8時くらいに入った。
その日は夏なのに肌寒かった。
玄関は木の板で封じられており、正面からの侵入は無理だった。
仕方なく塀を乗り越え、庭に入った。
ガラスの戸が壊されていて、白いレースのカーテンが揺れていたのをよく覚えている。
家の中は思ったほどの廃墟ではなかった。
暗かったので分からなかっただけかも知れないが。
1階はキッチンや風呂、居間などがあった。
先輩は風呂場がヤバイと言っていたので多少期待していたのだが、いたって普通の古い風呂だった。
その中でも印象に残ったのがキッチンだ。
キッチンには昔、家族が食事をしたであろうテーブルが置かれていた。
そのテーブルの上には、茶碗と皿がいくつか並べられていた。
今でもその光景が頭に残っている。
俺達は2階へ向かった。
急な階段を上った俺達を最初に向かえたのは、“3体の日本人形”だった。
廊下には棚があり、そこに3体の日本人形が置かれてあった。
俺達はそれを見て、「気持ち悪りぃ」と言っていたと思う。
しばらく人形の話題で盛り上がった後、一番近い部屋に入った。
そこはおそらく子供部屋だったのだろう。
絵本が散乱していた。
桃太郎だとか浦島太郎だとか、そんな感じの絵本が部屋いっぱいに散乱していた。
俺は足でそれらを退けながら進んだ。
その後は特に目立つような物はなかった。
他の部屋も一通り見て、俺達はホワイトハウスを後にした。
だが、問題が起きたのはその後だった。
俺は学生寮に帰り、後輩達にホワイトハウスの話をした。
後輩が自分の部屋に帰った後、俺はホワイトハウスで使ったインスタントカメラを取り出そうと、カバンを手に取った。
カバンがやけに重い・・・。
カバンのチャックを開けた。
すると、3体の日本人形が俺を睨んでいた。
「うわっ!」
声を上げ、カバンを投げ捨てた。
俺はすぐさま友達に電話した。
「お前か?」と聞くと、友達は爆笑していた。
タチの悪いイタズラだ。
明日になったら人形をどうにかしよう、そう思ってその日は寝る事にした。
次の日の朝、なんだか体がだるかった。
気持ちが悪く、吐き気がした。
学校を休みたかったが、簡単に学校を休むと先輩に何を言われるか分からないので、無理をして学校に向かった。
だが不思議なことに、寮を出ると多少は体が楽になった。
クラスでは、俺達がホワイトハウスに行った事が話題になっていて、何度も声をかけられた。
俺は体調が悪い事を伝えると、「呪いだ!」とか言って笑っている奴もいた。
授業中はほとんど寝ていた。
授業が終わって部活に行く頃には、かなり体調は良くなっていた。
部活も終わり、学生寮に帰る。
靴を脱ぎ、片付けて、部屋の鍵を開け、部屋に入り、倒れた。
部屋に入った瞬間に体が重くなり、吐き気や頭痛が止まらなかった。
俺はどうにか後輩に電話して、体温計を持ってこさせた。
39度9分だった。
すぐさま実家に電話して、迎えに来てもらった。
1時間30分ほどして叔母さんが迎えにやって来た。
叔母さんの車に乗り込み、病院に向かった。
学生寮を出ると、なぜか体調は多少良くなった。
病院では医者に、「正直よく分からない」と言われた。
「菌もないし、喉も腫れていないし・・・」と。
ヤブ医者にもほどがある。
とりあえず薬を貰い、久し振りに実家へ帰った。
実家に着いた俺を待っていたのは爺さんだった。
早速、家の外で爺さんのお祓いが始まった。
背中を叩かれたり、背中に文字を書いたりと・・・。
爺さん曰く、「小さい霊が多数と、九州の軍人が憑いておる」と。
俺は驚いた。
実は1ヵ月ほど前に、部活の大会で九州に行っていたからだ。
家族にはその事は言っていない。
爺さんはさらに言った。
「でも軍人は関係無いな。後もう一つ、変なのが憑いとる。これが何なのかは俺にも全く分からん。でも多分これが原因だろう」
爺さんはそう言うと、家の中に入った。
俺は疲れてその日はすぐに寝た。
次の日に爺さんに聞くと、「あれは祓うというより帰ってもらった」と言っていた。
念のために4日ほど学校を休んだ。
久し振りに学校へ行くと、クラス中の奴らから色々な質問攻めにあった。
それに、俺の体調不良は“呪い”ということで定着していた。
なぜか他のクラスでは、俺は死んだ事になっているらしい。
噂は怖いものだ。
それからしばらくは、知らない女の子に声をかけられたりと少しばかり楽しい日々が続いた。
それ以来、俺は霊現象のようなものには遭遇していない。
爺さんも健在である。
ちなみに3体の日本人形は、味塩を山ほどぶっかけて山に捨てた。
噂では、あの日本人形はホワイトハウスに戻っているらしい。
真偽のほどは定かではないが。
(終)
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