振り向いた友人の目の前にはお面が浮いていた
友人が夜道を歩いていた時、少し遠くに『お面』が落ちていたそうな。
縁日とかあったっけ?と思いながら、道の脇を歩き続けた。
だいぶお面に近付いた頃合いで、友人はおかしなことに気がつく。
そのお面は、祭りの屋台でよく見かけるプラスチック製のものではなくて、妙に生々しい人の顔をしたゴム製のお面だった。
気味悪いなぁ・・・と思いながら、足早にお面の横を通り抜けようとした時、「おこんばんわぁ」と声を掛けられた。
すると、とっさに横に振り向いた友人の目の前には女性の顔をしたお面が浮いていた。
そのお面は、強引に縦へ引き延ばしたムンクのような顔になっていた。
夜道で変なものを見せつけられた友人は、悲鳴も上げれずそのまま全力で逃げた。
「おこんばんわぁ、おこんばんわぁ、おこんばんわぁ、おこんばんわぁ・・・」
後ろから何度も声が聞こえていたが、無視して必死に走り続けた。
ようやくコンビニの灯りが見えた辺りで、しつこく聞こえてきた気味の悪い声も聞こえなくなった。
よく『妖怪や幽霊に声を掛けられても決して答えてはならず無視しろ』と言われるが、もしこの時に友人がお面に対して返事をしていたらどうなっていたのだろうか・・・。
(終)