真夜中に検問している警察官は

私が学生時代のお話です。

 

夏休みにサークルの仲間で

キャンプに行く事になりました。

 

いわゆる、

学生の貧乏旅行でした。

 

高速代をケチり夜中に出発し、

 

道の混まない朝のうちに

現地に到着する予定で、

 

車3台に分乗し、

出発しました。

 

やはり、夜中なので

普段渋滞している道も

 

ほとんど車も無く、

 

3台連なって

目的地に向かいました。

 

最初のうちは大きな幹線道路を

走っていたのですが、

 

目的地に近付くに連れ、

 

寂れた田舎の山道に

なっていきました。

 

その山道を、

一山、二山を越え、

 

いよいよ目的地近くになりました。

 

後は、この山道を下れば

目的地に到着です。

 

下り道の中腹にある

古ぼけたトンネルに入った時に、

 

トンネルの中程で

前を走っている2台が、

 

急に停車しました。

 

時間は午前3時47分。

 

このままで行くと、

 

予定よりかなり早く

着いてしまうかも知れない。

 

と思いながら助手席で

地図を見ていた私は、

 

運転しているAに、

 

「どうしたの?急に止まって」

 

と聞いてみました。

 

Aは、「あれだよ・・・」と、

指差しました。

 

何やら、警官が一人で

検問をしていました。

 

「どうしてこんな時間に

検問なんかしているんだろう。

 

何かあったのかな?

 

もしかして殺人事件でも

あったりして?」

 

とか言って、

Aとふざけていました。

 

その声を聞いて、

 

後席で寝ていたB子とC子も

目を覚ましました。

 

停車してしばらくすると、

 

1台目が終わり、2台目の

検問をしていた時です。

 

後に座っているB子の様子が

どうも変です。

 

まるで、何かに怯えているかの様に

落ち着かない様子で、

 

ブルブルと明らかに震えています。

 

普段から物静かで、

 

感情をあまり表面に出さない

性格の彼女が、

 

今日は明らかに変です。

 

C子がそれに気付き、

なだめようとしているが、

 

自分もB子の事が心配になり、

声を掛けてみました。

 

「B子ちゃん、大丈夫か?」

 

そうすると、

 

彼女は蚊の鳴くような声で、

何かをしきりに呟いています。

 

「あの警官・・・、ふ・・・、

普通じゃない・・・。

 

こっ、この世の人じゃない・・・」

 

C子がしきりになだめています。

 

そうするとAが、

 

「えっ、何?普通じゃないって。

そしたら幽霊ということか?」

 

と言いながら、

いたずらそうに笑いました。

 

2台目の検問も終わり、

いよいよ私たちの番になりました。

 

警官は笑顔で、

 

「どうもすいません。

 

近くでひき逃げ事件がありまして、

 

何か不信な車を見かけたり

しませんでしたか?」

 

Aは、自分たちは

キャンプに行く途中で、

 

特に変わった車等は

見かけていない、

 

と説明しました。

 

その間、B子は押し黙ったまま

震えています。

 

「そうですか、

ご協力ありがとうございました」

 

と警官が言い、

私たちの検問が終わりました。

 

そして、車を発進させようと

サイドブレーキを戻しながら、

 

別れ際にAが、

 

「成仏せえよ」

 

と警官に言いました。

 

そうすると、

警官がニッタリ笑いました。

 

その後、キャンプ場の

近所の人に聞いた。

 

昔、そのトンネルで検問中に

警官がひき逃げに遭い、

 

亡くなっているそうです。

 

夜な夜な

そのトンネルに出没し、

 

自分をひき逃げた犯人を

探しているという。

 

(終)

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