私が見ていた背中は誰だったんだろう
私は中学生の時に、クラスで登山キャンプに行った。
参加者は男女合わせて30人程。
貸し切りバスで現地に向かったのだが、事故の影響で到着がかなり遅れた。
だが、現地に到着した時はまだ空は明るかった。
なので担任の先生を先頭に、キャンプ地に向かってみんなで山を登り始めた。
この時の出来事を今でも不思議に思う
キャンプ地までは一直線の山道で、所々に標識もあるので余程のバカでも迷うことはあり得ない。
私は一番後ろを歩いていたのだが、なんだか急に足が重くなって少し遅れた。
しかし前方にはクラスメートの背中が見えていたので、そのまま山道を登っていた。
だんだんと夕闇が迫り、辺りが暗くなり始めた。
前を歩くクラスメートの後ろ姿もどんどん見え難くなり、私は歩くペースを速めた。
だが、まったく追い付けない。
そのうち周囲が見えない程に暗くなった。
焦った私は大声で前を歩くクラスメートに声をかけたが、反応せずにどんどん歩いて行く。
その差はおよそ20メートル。
そして遂に周囲は真っ暗になってしまい、私は身動きが取れなくなってしまった。
夏だったとはいえ結構寒くなり、カッパを着用してその場で待機した。
数時間後、懐中電灯の明かりが見えた。
担任の先生と登山経験のあるクラスメートの合わせて3人が、私を捜しに来てくれた。
しかし私が待機していた場所は、キャンプ地から歩いて1時間以上もかかる場所だった。
私はとうにキャンプ地を過ぎて歩いていたのだ。
私の前を歩いていたはずのクラスメートは、聞けば先頭から2番目を歩いていたという。
それなら、私がずっと見ていたあの背中は誰だったんだろう?
その後は特に変わったことは無かったが、この時の出来事を今でも不思議に思う。
(終)