俺と全く同じ顔の奴がカナダの空港にいる
15年くらい前のことになるが、俺が中学3年生の頃、ホームステイ先のカナダから帰国する時の話。
そのホームステイは学校のプログラムで20人くらいで行ったのだが、その帰りのバンクーバーの空港で日本行きの飛行機を待つ間、友人と空港のカフェで暇を潰していた。
すると、いきなり友人が慌てながら「後ろ見ろ!」と言ってくる。
なんだ?と思って振り返ると、そこには俺が走っていた。
着ている服や持っている荷物は全然違うが、友人が見ても自分が見ても俺本人だ。
そいつは『CANADA』と書かれたダサいトレーナーを着ていて、キャリーバックを引っ張っていたのが印象に残っている。
何か慌てた様子で、すぐに何処かへ行ってしまった。
恐ろしいくらいに俺と瓜二つだったので、写真くらい撮れれば良かったと今でも後悔している。
そして、数年前から母がオーロラに夢中でカナダへも何回か行っているのだが、同じくバンクーバーの空港で何度か俺を見たという。
今の俺と全く同じ顔の奴が、代わり映えもなく『CANADA』と書かれたトレーナーを着ていて、キャリーバックを引っ張って何処かに向かって走って行ったらしい。
そいつは、俺が中学の頃から十数年経った今でも、俺と同じように成長している。
変わらずあのダサいトレーナーを着て走り回っていることに違和感を覚えるし、何者なんだと・・・。
しかし、空港職員や店舗スタッフらにはそいつが見えないようだが、母は何度も目撃している。
であれば、「今度見つけたら写真を撮ってくれ、出来れば何者か聞いてみてくれ」と母に念を押してみた。
(終)